光の家の隣のアパートにて(1)
光が、父から聞いていた鍵と、電子鍵のパスワードを入力し、一行はその「空き家」に入った。
そして、その空き家の玄関で、やはり最初は華奈の大声三連発。
「わーーーー!おっしゃれーー!」
「このシックな木目調!」
「華奈もここに住む!」
そんな華奈のお尻を、母の美紀が叩く。
「あのさ、目と鼻の先に住んで、どうしてそういうおバカなことを言うの?」
「どうせお人形だらけの部屋にしちゃうくせに」
華奈は、ムッとした顔で、母美紀に言葉を返そうとするけれど、案内役の光が、歩きだしてしまった。
光が、それでも説明した。
「父さんから聞いていたのは、上に四軒、下に四軒、つまり八軒分」
「部屋の内部は全部同じ、2LDK」
「それでも、各部屋には冷蔵庫、エアコン、バス、トイレ、キッチン、クローゼット、洗濯乾燥機、それから防音設備にしたと聞いたよ」
光としては、真面目に説明しているつもり。
しかし、その光に春奈が文句を言う。
「どうして、しっかり言ってくれないの?とっくに知っていたんでしょ?」
「そういういい加減な態度がいけないって言うの」
光は、春奈に怒られると、やはりうろたえる。
「う・・・だって、すぐに使うとか何とか言ってなかったしさ」
「でも、ごめんなさい」
光は、素直に春奈にわびる。
ただ、春奈の文句は、光の「ウロタエ」が狙いだったようだ。
光が下を向いた瞬間、さっと光の手を握ってしまう。
ソフィーは、そんな二人に呆れた。
「まったく・・・ウカツ者の光君と、おっとり春奈さんだ」
「だから、任せられないって言うのに」
ルシェールも、ムッとした。
「ねえ、光君、説明ばかりじゃなくてさ、実際に内部を見せてよ」
由香利も続く。
「春奈さんも、ニコニコするんだったら、文句言わないでよ、魂胆がミエミエだったし」
由紀は
「亀とおっとりなんて待っていられない、私が開けちゃう」
結局、「同じ内部なんでしょ?」と言いながら、一つの部屋を開けて入ってしまう。
華奈も、何かを言いたかったようだけど、由紀とそれに続く全員の動きに、一歩遅れた。
さて、部屋の内部は、光の言った通りになっているけれど、やはり実際に見ると、巫女たちは、かなりご機嫌な様子。
春奈
「いやーー・・・かっこいい、広い、ベッドもセミダブル」
ソフィー
「お風呂も大きめ、トイレもピカピカ」
由香利
「クローゼットも広いし使いやすい」
「へえ、テレビというかモニター?大きな画面、44型くらい?」
由紀
「こうなったら、私も住むかなあ、どう?光君」
由紀は、光に即入居を申し出た。
華奈も、入居したいのだけど、母美紀に「目と鼻の先」と言われたので、口を「への字」に結んでいる。
光は由紀にまず簡単に承諾。
「そうだねえ、由紀ちゃんはクラスでも隣だしさ、いいかなあ」
そして
「キャサリン・サラ・春麗は、当然でさ、後は部屋割りだけだね、一階にする?」
と、ここでも簡単。
ただ、そんなに簡単には、話が進まない。
ルシェール、ソフィー、由香利が、本当に怒り顔で光を見ているのである。