光のもう一つの隠されていた力
「とにかく光君は・・・」
とまで話して、春麗は水を一口、胸を抑えて言葉を続けた。
「手を揉んでみてわかったのは・・・」
・・・なかなか言いづらいようだ。
また間があいて、水を一口。
「でね、すっごいの・・・その力が・・・はぁ・・・」
ますます真っ赤になる春麗、「しかし、それでは意味が不明」・・・のハズになるけれど、さすが感度が高い巫女たちである。
「すっごい」「力」の真実を、春麗の声と表情、心理から読んでしまったらしい。
特に候補者世代巫女たちの顔が、真っ赤に染まった。
周美鈴も、必死に春麗の言葉を補足する。
「そういう力があるから、阿修羅も宿れるのかもしれない」
「そうでなかったら、あの阿修羅なんか、普通の人では宿せないもの」
「それは、わかるでしょう?」
ただ、いきなり手を揉まれ、「わけのわからないこと」を言われた光自身は、春麗と周美鈴、華国祥の顔を見て、また候補者世代巫女を見て、呆れている。
「一体何のこと?」
「すっごいとか、力とかさ」
「あのさ、僕はまだ、疲れているの」
「春麗と周美鈴さんが手を揉んでくれたから、これは中国で有名なハンドマッサージかなあと思っていたんだけど、違うの?」
「本当に、一体、何なの?」
さて、当の光から質問を受けた巫女たちは、互いに顔を見合わせる。
そして相談を始めた。
春麗「これは・・・保健の先生で、一番年上の春奈さんから」
春奈「えーー?それは実際に光君の手を揉んだ人だよ」
周美鈴「でもねえ、恥ずかしいよ、私たちだって、うら若き乙女ですもの」
ソフィー「うーん・・・みんなの前で言うべきこと?」
由香利「それは・・・恥ずかしいよ、ああ・・・ドキドキしてきた」
由紀「その意味では私が一番近い体験をしているんだけど・・・でも恥ずかしい」
ルシェール「私は愛の妙薬止まりかあ・・・うーん・・・」
華奈は、もはや言葉が出ない、顔が真赤、胸を抑えて下をむくだけの状態。
楓「うーん・・・従姉と言ってもねえ、言いづらいなあ」
ところが、母親世代巫女は、意外にホッとした顔になっている。
出て来る言葉は、
圭子「やはりねえ・・・もう一つの隠されていた力だね」
美智子「そうだと思った、聖夜の事件を乗り越えて富士山麓の決戦あたりから」
美紀「うーん・・・生まれる時代を間違えた」
ナタリー「そうだねえ、底なしになる可能性?」
奈津美「阿修羅も底なしの霊力、光君には・・・それか・・・」
ニケは、部屋全体を見渡す。
そして圭子の顔を見た。
「圭子さん、無理だよ、言っちゃおうよ」
圭子は少し考えた。
「そうだねえ、今決まる話でもないしねえ」
「ある意味、その逆とは違って安心この上ない話」
とうとう、圭子は、意を決した。
そして光に声をかけた。
「ねえ、光君、これは朗報なの」
光は「え?」と叔母でもある圭子の顔を見る。
圭子はニッコリと笑う。
そして、はっきりと言い切った。
「春麗と周美鈴が、診断したのは光君の精力」
「すごいんだって!良かったねえ!」
「そして、もう一つ、一番大切なこと」
「精力」時点で「意味不明」の光に、圭子はさらに決定的なことを告げる。
「光君、子だくさんになるみたい、ねえ、うれしい!」
「早く赤ちゃんを見たいなあ!」
光は、その言葉で全身が硬直。
候補者世代巫女全員が、真っ赤な顔で光に視線を集中。
母親世代巫女は、手を打って大笑いになっている。




