また責められる華奈、作戦には光の父?
どうにもならない状態で、光と奈津美を見ていた春奈には思い出したことがあった。
「そういえばね、光君が三年生になった始業式の頃かなあ」
「電車の中かな、とにかく通学中にすっごくボンヤリしてさ」
その話に華奈が反応する。
「そうそう、いつも呆れるくらいボンヤリしてるけれど、マジでボンヤリしてた」
ただ、春奈と華奈の話では、さっぱりわからない。
楓が、やはり切れた。
「もーーー!そこの二人!教師と生徒!しっかりわかるように説明しなさい!」
しかし、春奈は冷静。
「うん、そこでね、光君が変なことを言ったの」
「突然、阿修羅の声が頭の中に響いたんだって」
阿修羅の名前で、楓は大人しくなる。
それでも、その続きが聞きたくて仕方がない。
「で、どうなの?何だったの?」
ついつい詰問調になる。
春奈は言葉を続けた。
「でね、その後で光君が言うのに、不思議な公式とか化学式の洪水みたいなのなんだって」
「何となくわかるけれど、難しいものだとか言っていた」
華奈も思い出して言葉を続けた。
「ほーんと、難しかったらしいの・・・ねえ、光さんも可哀そうに」
「もともと大ボンヤリの光さんなのにねえ・・・」
「あろうことかね、三年生になってもね、それを忘れちゃうほどボンヤリ」
「そのまま、今までの二年生の教室に入ってしまってねえ・・・」
「もうね、妻として恥ずかしいのなんのって」
華奈も懸命に思い出して言葉を続けるけれど、最後の「妻」表現が、問題があるようだ。
由香利
「そんなことをさせないのが、優秀な妻なのでは?」
ルシェール
「華奈ちゃんは、隣を歩きながらどうして管理できないの?」
由紀
「私もあの時は自宅から登校したの、そしたら、そんな話を聞いてね、マジで焦った、華奈ちゃんには任せられないと思った」
ただ、一緒に登校した春奈もソフィーも、華奈には助け船を出さない。
春奈
「まあ、そんなものさ、まだまだ小娘」
ソフィー
「いいや、責められても華奈ちゃんは、めげないから」
確かに華奈は、何もめげない。
少しムクれただけ、「いいの、光さんは最後に私を娶るの」それだけをつぶやいている。
さて、キャサリン、サラ、春麗と母親世代巫女には、どうでもいい話のようで、全く反応がない。
それよりも、光と奈津美の状況を見続けている。
その光がペンを動かす手を止めた。
光はにっこり。
「ねえ、奈津美叔母さん、こんな感じ?」
奈津美も、フフッと笑う。
「ああ、そうするのか・・・ここでねえ・・・」
光
「さすが阿修羅君だよ、こんなの誰もわからないって」
奈津美
「まさかの作戦だよね、これは面白い」
光
「そうなると、超高速計算ができるPCがいるかなあ」
奈津美
「史パパにお願いしたら?菜穂子姉さんもそれを言っていたよ」
光
「うん、話してみる、そういうの好きだから」
光と奈津美は、二人にしかわからない話を続けている。
ただ、その中で光の父の名前が出たことで、巫女たちの顔が少々落ち着きが戻っている。