光の家の隣にアパートとは・・・
まず、超ご機嫌の楓に春奈が反発した。
「楓ちゃん、簡単にそんなことを言ってさ、東京の高校に転校するの?お母さんの了承があるの?」
突然、楓のビックリ発言を聞いた、楓の母圭子も怒り顔
「どうしてアホなの?恥ずかしいにもホドがある。光君のお世話係って言ってもね、楓は料理、炊事、洗濯、すべて中途半端、却下します」
春奈の母、美智子も楓を諭す。
「楓ちゃんね、光君ってね、今後は食べ物とか体調管理には、すっごく気を使うの、だから、春奈だってアヤシイくらいだから」
そんなことを言われた春奈は、ムッとなっている。
続いて、ニケ
「楓ちゃんの気持はよくわかる、光君の体力不足を心配する気持もね、でもさ、光君は関東で育ってさ、お魚料理とか大好きなんだ、楓ちゃん、お魚をさばくことできる?タコとかイカの料理できる?」
楓は「う・・・無理・・・奈良に海がない」と、ここで意気消沈。
ソフィーも口を出す。
「楓ちゃんね、奈良にも若い巫女が残っていて欲しいの」
「どういうわけか、候補者巫女は全員関東だけどね、それが宿命なんだ」
ソフィーは観音様の巫女、楓にとって、その言葉はかなり重い。
楓の意気消沈の程度は、ひどくなった。
結局、楓も机に突っ伏して泣き出してしまった。
他の巫女たちは、もう、楓には言葉を出さなかった。
出しても、出てくるのは楓への反発しかない。
そして、その楓は、突っ伏して泣いているだけ。
これでは、どうにもならない。
圭子は、娘の楓の様子を横目に見て
「まあ、本当に申し訳ない、楓も寂しいらしくてね」
「小さい頃から、光君の心配ばかりしていたからさ」
「私からも、しっかりと諭すから、今日のところは」
と、巫女全員に頭を下げた。
圭子は話を続けた。
「それでね、まず、光君の警護として来られたキャサリン・サラ・春麗には、光君の家にとりあえず住んでもらうことにしたいの」
「え?」と驚く「日本育ちの候補者巫女たち」には構わず、圭子は話を続けた。
「あのね、今、会議をしているのは、二階の和室」
「そこからも見えると思うけれど、隣の家が空き家でしょ?」
圭子がそんなことを言うので、和室にいる巫女全員が立ち上がり、窓を開けて「空き家」を見ている。
光も、目をこすりながら立ち上がった。
そしてポツリと
「そう言えば、二年くらい前に、父さんがこの空き家を買ったって言っていた」
「それで、何か修理していた」
「入ることもなかったけれど」
圭子の声が聞こえてきた。
「おそらくね、何部屋かあって、アパートみたいになっているはず」
「それから、その空き家から、光君の家にも、通り抜けられるようになっていると思う」
それを聞いていたキャサリン
「それでは、さっそく拝見させてもらってよろしいでしょうか」
サラも、
「かの有名な建築家が改装したアパート、とても興味があります」
春麗は、パッと光の腕を組んだ。
「光君!さっそく行こうよ!」
光は突然、腕を組まれてキョトンとしたけれど、すぐに頷いた。
「ああ、じゃあ、そうだねえ」
そして、春麗と腕を組んだまま、和室を出て、階段を降りていく。
その後ろを、キャサリン、サラがムッとした顔で、続く。
日本育ち巫女たちは、全員が「あ~~~~気に入らない!光君の超ボケ!」と思いながら、その後に続く。