圭子の分析、叔母奈津美と光の聞き取れない会話
そのような一種不穏をはらんだ状況の中、圭子が冷静に全ての巫女に話し出した。
「あのね、全て優秀な巫女さんたちなので、ある程度は読んでいると思うけれど」
その圭子の言葉に全ての巫女が集中する。
圭子は、話を続けた。
「ここにいる巫女さんたちは、全て光君の前世と関係しているの」
「つまり、前世で妻であるとか、母であるとか、娘であるとかね」
「キャサリンもサラも春麗も、実はそうなの」
「私は前世も来世も結果が読める巫女だから、よくわかる」
「そして、みんながわかっている通り、春奈ちゃんは光君の過去世で、一番妻だった回数が多く、時期が長かったの」
「だから、普通に一緒になってしまうの」
「引きあってしまうというか、喧嘩をしていてもね」
春奈は、下を向いた。
少し前に、他の巫女に取り囲まれる光に、つい嫉妬してしまったことを思いだした。
その後、光に文句を言い過ぎて、光が胃を痛め苦しませ、天使長ミカエルの仲介で、ようやく仲直りをしたけれど、今でもそれを反省している。
圭子は、そんな春奈を少し見て、話を続けた。
「難しいのは、今の時代の光君はご存知の通り、体力に不安があること」
「それと、哀しい思いが消えないこと、それは・・・わかるよね」
巫女全員が、それは、「光と、その母菜穂子の事件」とわかっている。
圭子の顔が厳しい。
「光君が、菜穂子さんとのことを乗り越えるには」
後ろ向きで、圭子の話を聞いていた光も、振り返った。
圭子は、真顔で光の顔を見る。
「いい?光君、伴侶を見つけて、そして子供」
「子供を抱けば、わかるよ、乗り越えられる」
その圭子の言葉に、候補者世代巫女の顔は真っ赤。
じっと、光を見る。
光は、頭を抱えた。
「そう・・・言われても・・・」
何とも、返事ができない・
今度は奈津美が声をかけた。
「ねえ、光君、菜穂子姉さんも、心配していたけれど」
その奈津美の目の色が濃い。
特別な神霊が降りたような感じ。
光はもちろん、巫女全員が緊張した。
奈津美は、再び光に声をかけた。
「ちょっといい?光君」
光を手招きをする。
奈津美は、光の耳元で小声。
「あの東大寺の四月堂の時にね、菜穂子姉さんがね、私に」
光は、姿勢を正した。
「え?あの浄土で、母さんに?」
奈津美
「うん・・・でね・・・」
・・・・・・・
奈津美と光の会話は、全く他の巫女には聞こえない。
圭子が、あきらめたような一言。
「さすが、菜穂子さんと奈津美ちゃんの神霊結界術」
「出雲の秘術かな」
奈津美と光の「聞き取れない会話」は、しばらく続いていた。