光は春奈の胸を覚えていた
特に候補者世代巫女たちは、光の顔が春奈の胸に包み込まれた状況に焦った。
華奈
「何事?でも、最近春奈さんは少々豊かになっている、マジで焦る」
由香利
「あれは、教師としては問題行為なのでは?逆セクハラでは?」
由紀
「一番、怖れていた事態が目の前に展開している、奪い返さないと」
キャサリン
「冷静なキャサリンは、もういません、実力行使です」
サラ
「春奈さんのうれしそうな顔が気に入らない、引きはがしましょう」
春麗
「少し時間が長すぎ、10秒は長い」
ただ、その中でルシェールは冷静。
「その春奈さんの笑顔の前に、光君は寝ちゃった、ああなると誰でも同じ」
ソフィーは、もっと冷静。
「とにかくもう一度寝かせればいいさ、そして起きた時に、私がムギュっとすれば、光君はアホだからずっと私にムギュっとされていたと思うはず」
従姉の楓にいたっては、光の顔が春奈の胸に包まれても、どうでもいいらしい。
「そういえば、春奈さんはジャスミンの香水つけていたなあ」
「そうなると光君は、ジャスミン光君になるのかな」
「そんなことより、この月餅が美味しい」
さて、光は、春奈がようやく周囲の視線に気がついて、その顔を胸から離した時には、気持ちよさそうに寝息を立てている。
春奈の母、美智子が呆れたような顔。
「無理やりすぎ、春奈は風情も何もない」
「おなかが、薬師様の丸薬で一杯になって、今は消化中」
「その前に、春奈の温かい胸でしょ?」
「それなら光君は寝ちゃうだけ」
春奈は、少々ムッとしたけれど、すぐに笑顔を取り戻す。
「まあ、どうでもいい、結果として光君をムギュっとできたんだから」
「それに、消化が終われば目を覚ますはず」
「そうしたら、もう一度ムギュする」
特に候補者世代巫女には、聞き捨てならないことを言うけれど、春奈のモクロミは、成就しなかった。
テーブルに顔を伏せて寝ていた光が、突然、起きてしまったのである。
そして、春奈に「ムギュ」するタイミングを与えず、立ち上がり、部屋の中を歩きだしてしまった。
その光に、圭子が声をかけた。
「光君、大丈夫?もう少ししたら来客があるみたいだけど」
光は、明るい顔、輝くような瞳。
「うん、春麗が言っていたね、中華街から?大丈夫だよ」
「春奈さんのお薬が効いたよ、助かった」
奈津美も光に声をかけた。
「その春奈さんのお薬を飲んでから先のことは、覚えている?」
その質問に対する光の答えは、全ての巫女が注目した。
そして、光は、顔が真っ赤になってしまった。
「えーっと・・・春奈さんに・・・」
春奈も、顔から火が出るように真っ赤になっている。