お菓子パーティーには、それぞれの個性
さて、光にしては珍しく少々長めの話と、楓の涙があったものの、テーブルの上には、ホテルからのクッキーと、候補者巫女が元町と中華街で買い求めてきたお菓子類が、どっさりと広げられた。
光は、まだ心配なのか、楓にやさしい言葉をかけた。
「楓ちゃん、いつまでも泣かないの」
「お菓子食べて元気になって」
楓は、ほぼ光の言葉などは聞かずに、ニンマリとする。
「そうだね、光君・・・どれから食べようかなあ」
「これって・・・すっごく悩むよねえ・・・」
「どれから食べたら一番美味しいのかなあ」
やはり、途中から光の「やさしい言葉」などは、楓の心から消え去ってしまった。
目の前のお菓子に、目がランランとなっている。
その楓を見た、母圭子はガッカリ。
「まったく・・・神妙な雰囲気もあったものじゃない」
「これで、また明日、体重計に乗れない」
「明後日も、不安で体重計に乗れない」
「そして、それがずーっと続く」
そんな圭子に、奈津美
「しょうがないよ、それが楓ちゃんらしい」
「楓ちゃんに食欲がないとか、文句を言わない方が怖い」
美智子も、そんな感じ。
「ほんとにねえ、あのパワフルな楓ちゃんを見ないと、元気がでない」
「その少しでも、光君に欲しいなあ」
「ねえ、今でも、楓ちゃんが五個クッキーを食べるのに、光君は一個をモタモタとしてるしさ」
ニケは、光の食べる遅さに注目。
「まあ、小学生でも、あれより早い」
「他の若い巫女さんのほうが、たくさん食べているし」
ナタリーも心配そうな顔。
「ルシェールも嘆いていたけれどね、食べるのが遅いのは口に合わないからかなあって・・・でも見る限り、単に遅いだけかも」
母親世代巫女の、光に対するそんな分析はともかく、候補者世代巫女たちは、しっかり元気である。
由香利
「やはり名門ホテルのクッキー、上質なバターを使っているね」
由紀
「紅茶が、自然に甘い、本当にクッキーとの相性を考えてある」
ルシェールも感心しきり。
「ここで料理を習いたいなあ、マジで美味しい」
華奈は、クッキーを食べたり、中華街で買った中華菓子を食べたり、いろいろになっている。
「うーむ・・・どちらも捨てがたいから、両方食べる」
「しっかり食べてボリュームアップ、それで光さんへの好感度もアップする」
キャサリンは、例によって作法通りキチンと食べる。
「やはり、お菓子を食べるにも、マナーは大切」
「そのマナーにおいては、光君もしっかりしている、あの食べ方なら心配なく連れて帰ることができる、少々食べることが遅いけれど」
サラは、クッキーではなく、元町で買ったレモンケーキ。
「やはり地中海世界に育った私は、爽やかなレモンケーキ落ち着くし似合うし美味しい」
「フランス流もいいけれど、バターを使い過ぎだ」
「そもそもバターなんて、オリーブオイルの代替品だったはず」
春麗も華奈と同じ、クッキーと中華菓子を食べる。
「どっちも好きだなあ、美味しければかまわない」
「それにしても、日本の中華菓子は上品な感じ」
春奈もソフィーも同じように食べているけれど、さすがに年齢を気にしているらしく、若い巫女ほどではない。
春奈はやはり、慎重。
「最近、お肌がねえ・・・」
ソフィーも、少々大食をためらう。
「ストレスかなあ・・・」
様々な状態の中、お菓子パーティーについては、スムーズに進行している。




