次なるモンスターは地中海世界から?
ホテルに戻り、ソフィーからのメールに書かれた部屋に入った「候補者世代巫女」たちには、「とても容認できない」状態だった。
何しろ、光の右隣にはルシェールがニッコリと座り、左隣には光の叔母圭子が、また満面の笑顔で座っている。
華奈は、本当に落胆。
「マジ?こんなの見たくない」
由香利は、顔面蒼白。
「決定ってこと?ここで?」
由紀は目を閉じ、ブツブツと呪文。
「寒川大神様、これは・・・いかなる・・・」
キャサリンは震えている。
「何のために日本まで来たの!あーーーうかつだった!」
買って来たお菓子類を持っているのが、やっとの状態。
サラは、必死に真実かどうかを探る。
「アルテミス様・・・何かの間違いでは?」
春麗は、両手をギュッと握りしめた。
「単に、隣の席に座っただけ?いや・・・そう思うのは危険?」
ただ、いとこの楓だけは、また違う。
「光君に、そんな神経があるわけないって」
「たまたま座ったら、ルシェールがそこを狙って座っただけ」
「そもそも、おっとりルシェールなんだよ」
「私たちがいなかったから、それが成功しただけ」
さて、「候補者世代巫女」に特に緊張感が走る中、光の叔母圭子が声をかけた。
「ああ、皆様、とにかくお座りになって」
さすが、日本の巫女界の中でも最高クラスの巫女、その言葉には、重みがある。
全員が、素直に目の前の席についた。
すると、いきなり光が立ち上がった。
少し考えているので、何か話をするようだ。
春奈は、そこで思った。
「考えてから立ち上がって話をすればいいのに、そういうところが、ウカツな光君だ」
「家に帰ったら、その旨指導しよう、二人きりがいいな」
と、「特別指導」を思いつき、ニンマリとするけれど、案外スンナリと光の話が始まってしまった。
これでは、春奈のニンマリも長続きはしない。
光は、咳払いをして、話しはじめた。
「みんな、昨日から、今日の戦いまで、本当に大変だったと思う」
「心から、感謝します」
「お伊勢様から始まって、東大寺、春日大社、氷室神社、ルシェールの教会、お饅頭の神社、薬師寺、唐招提寺」
「様々な尊い御神霊の御力を授かり、突然の、ここ横浜での戦い、視肉と太歳、白蛇精にも、始末をつけることができました」
「ここで深く、感謝します」
「さて・・・次に・・・」
光にしては、まともな話が続く。
華奈は、そこで思った。
「うん、こういう光さんは、かっこいい」
「妻になりたいなあ・・・いい加減な光さんでもいいけど」
由紀は、目を丸くした・
「へーーークラスでも、あんなにしっかり話すってない」
「ボンヤリ、ボーっとしているのが光君なのに」
由香利は、途中からあることに気がついた。
「半分は阿修羅が話しているのかもしれない」
「光君の目が輝いているし」
「・・・となると・・・」
キャサリンは、光の瞳をじっと見ている。
「もしかすると、また新しい戦いがあるのかな」
「そうでなければ、お菓子だけのパーティーになるはず」
サラが一番表情が変わっている。
「キャサリンの戦いは築地とアメリカ大使館前、春麗はここ横浜・・・」
「となると・・・次は私?・・・え・・・あれ?もしかして・・・あいつ?」
春麗がサラの心理を読んだ。
「サラちゃん、地中海のモンスターを教えて、何かすごい邪念を感じる」
そのサラの心理は、他の巫女たちも、同時に読んでしまったらしい。
集まった部屋に、緊張感が走った。