候補者世代巫女は元気に元町散歩
さて、一方、ホテルの部屋で倒れてしまった光はともかく、「候補者世代巫女」たちは、元気ハツラツだった。
まずは、奈良育ちで滅多に横浜などには来ない楓が騒ぎ出した。
「あんなひ弱でナマケモノの光君は、ルシェールとか春奈さんに任せればいいって!」
「どうせ、ルシェールにムギュってされているのが関の山」
「そして、それを悔しそうに見るしかない年増の春奈さん」
「そんな構図なんて、わかりきっている」
「それにさ」
「当の光君、結局、無粋と無神経のカタマリ!」
「白蛇精が可哀そうになるほど、お色気なんて通用しないの」
・・・と言い続けるけれど、それでは何をしたいのか、他の巫女たちには、さっぱりわからない。
たまりかねた華奈が楓に尋ねた。
「だから、楓ちゃん、何をしたいの?」
「光さんは、一時的に預けてあるだけ、ルシェールがムギュっとするのは気に入らないけれど、どうせ光さんは反応が薄いし誰にされたかもわからないだろうし」
結局、華奈も何を言っているのか、自分でもわからなくなってしまった。
それでも冷静なお姉さん格の由香利が話をまとめた。
「結局、楓ちゃんとしては、横浜みたいな大都会にいるのに、ホテルの部屋で光君の回復を待つだけってのは、耐えられないってことでしょ?」
「だとしたら、おそらく回復する時間帯を見計らって、ここから元町とか騒ぎが収まった中華街とか、散歩すればいいんじゃない?」
「そうでしょ?楓ちゃん」
楓は、由香利の取りまとめには、全く反論が無い。
その上、尊敬した。
「いやーーー!さっすがだなあ!天照様の巫女、同じ天照様の巫女でも誰かとは大違い」
「ねえ、まったく呪文は正確無比、なめらかで力強い」
華奈はむくれた。
「・・・誰かって・・・私しかいないじゃない・・・」
「でも、事実だ・・・悔しい」
そんな一悶着があったけれど、「候補者巫女」たちは、まずはホテルを出て、元町に入った。
神奈川育ちの由紀や、築地育ちの由香利は元町には慣れているため普通に散歩するけれど、特に外国人巫女の、キャサリン、サラ、春麗は元町で、あちこちの店に入り目がキラキラと輝いている。
キャサリン
「あら・・・こういう食器が好き」
サラ
「イタリアンのお店もあるね。へえ・・・このバッグ欲しい」
春麗
「中華街のギラギラ感とは違って、このオシャレ感はいいなあ」
キャサリン
「ねえ、ここ、魔女のお店だって!」
サラ
「へえ・・・珍しものグッズ?本もあるね」
春麗
「少しフレグランスを買うかな」
「ハーブティーもたくさんある」
楓は途中から大きなスーパーに入り、チョコレートとクッキーを買い込んでいる。
「光君に少し分けるかな」
「春奈さんの年齢だと、こういうものはあまり食べない」
「やはり若い身体には、こういうカロリー高めなのがいいの」
そう言いながら、付き合わされた華奈は
「あげると言っても、一割程度でしょ」
と、面倒そうな顔になっている。
これで、「候補者世代巫女」は、なかなか、それぞれである。