白蛇精が可哀そうになるほど光は・・・
光がルシェールに抱きしめられる様子を見て、春奈はどうにもできなかった。
悔しい気持ちが真実。
しかし、いかに前世が妻だったとか、過去世において何度も妻だったと言っても、現在の世では、かなり年齢差がある。
「しかたないよ、今回は」
母美智子の声も心に響く。
「うん・・・」
春奈も、それは理解した。
それと、自分以外に、光を託すとならば、一番、最初に浮かんでくるのは、やはりルシェール。
それ以外は、由紀と由香利になる。
華奈では、残念ながら、光の足手まといになりそうで不安しかない。
美智子は、さらに春奈に念押しをする。
「もし、光君がこの世で倒れちゃえば、来世での出会いもないんだよ」
「だから、この世では、しっかりと伴侶を作らせて、子供を・・・光君・・・阿修羅の血を継がせないといけない」
「それが途絶えれば、人類そのものが危険になるのだから」
春奈は、涙がこぼれてきた。
「それは、わかっているって・・・わかっているけどさ・・・」
やはり、この世の年齢差が悔しくてならないのである。
さて、ルシェールに思いっきり抱きしめられた光は、当初バタバタとなっていたけれど、少しして大人しくなった。
その光にルシェールがやさしい声をかけた。
「甘い物って?何がいいの?」
光は、少し考えて、答えた。
「あまり重くなくて、食べやすくて、軽めのもの」
「できれば・・・紅茶かなあ、のども乾いたかも」
春奈は、光の言葉にすぐに反応した。
「わかった、光君、紅茶とクッキーかな」
「すぐに手配する、ダージリン?それとも?」
話が現実的になってきたので、ルシェールも光から、ようやく腕を離した。
光も、やさしい顔になっている。
「そうだね、ソフィーにお願いして、全員が入る部屋を取ってもらって」
「お茶会にでもしよう、お礼もしたいから」
その言葉と同時にソフィーが入って来た。
「光君、そうなると思ったから、準備したよ」
「それでね、歩ける?」
ソフィーは、光が歩けるかどうかが、まだ心配な様子。
光は、立ち上がった。
そして、少し歩き、ブツブツと言い始めた。
「頭が痛かったんだけど、治った」
「吐き気もおさまった」
「肉の塊を見て、気持ちが悪くなって」
「阿修羅君と一緒になって、カンフーのお兄さんと戦ったなあ」
「案外簡単に倒せた、でも、全部倒したら疲れた」
「何しろ人数が多かったし」
「それから肉の塊みたいなお姉さんがいてさ、手を振って来たけれど、何のことかわからないし」
「マジ、わからないなあ、この寒いのに、あんな胸を出してさ」
「寒さを感じない胸ってあるのかなあ・・・」
「よくわからないなあ・・・」
「どうでもいいけどさ・・・」
どうやら、光は、視肉と太歳、白蛇精を思い出しているようだ。
ソフィーは、その光の「ブツブツ」を聞いて、苦笑いになった。
「はぁ・・・あのエロチックな白蛇精が、単なる肉の塊?」
「胸空きのドレスが寒いだけ?」
「・・・この子には・・・マジ、お色気は通用しないなあ・・・」
「白蛇精も、ガッカリだろうなあ」
同じことを感じたらしい、春奈、ルシェール、美智子はクールサインを出している。