目覚めた光をルシェールが抱きしめる
光は、ホテルの部屋に到着し、ベッドを見た途端、その上に倒れ込んでしまった。
そして、こうなると、癒し系の巫女の出番となる。
ルシェール、春奈、医師でもある美智子が、光の様子を見守ることになった。
ルシェールは、目を閉じて寝入ってしまった光をじっと見て
「まさか、あそこでルカ伝は、考えもしなかった」
とつぶやくと、春奈が反応した。
「阿修羅の考えなのかな、でも、あの方法が正解、集めて一気に壊滅する」
美智子も光を見て、目を細めた。
「集めた善の御神霊を全て使い切ったね、これなら文句が言われない」
ただ、不安もあるようだ。
「白蛇精の言葉が気にかかる」
ルシェールも、それで不安な顔。
「心の傷が深すぎる・・・ですよね・・・」
「お母さんとのこと、まだ癒えていないんだ」
「ほんと、あれほどのご対面をして・・・涙流しても・・・」
春奈は難しい顔をして、腕を組んだ。
「光君は、これで頑固者なの」
「誰が何と言おうとも、自分を責め続ける」
「白蛇精も、それを見抜いた」
「そして、その傷の深さが、計り知れないこともね」
ルシェールは、光の髪の毛をなでた。
そして汗がふきだしている額を、湿らせたタオルで拭く。
「仕方ないね、こういう人に惚れちゃったんだから」
少し涙ぐんだ。
「でも、本当に心の底からの笑顔って、光君には・・・ないのかな・・・」
「うわべだけの笑顔?ずっと・・・そうなの?」
「可哀そうだよ、そんなの・・・」
「あんなに甘い物が好きで、私が作った、拙いシュークリームを下手くそな食べ方で、こぼしながらニコニコして食べたあの笑顔が忘れられない」
「あの笑顔が・・・見たいよ・・・」
ルシェールは、光の手を握った。
すでにルシェールは立っていられなくなった。
光の手を握ったまま、座り込んで泣き出してしまった。
春奈も泣いてしまった。
春奈
「私、時々、文句言って困らせちゃうし・・・」
「力不足かなあ・・・」
「いくら前世で妻っていっても・・・役立たずだよ、この時代で・・・」
美智子は深刻な話の展開に、頭を抱えた。
「うーん・・・どう言ったらいいのかなあ・・・」
「難しいなあ・・・早く伴侶を決めたいけれど・・・」
しばらくは、三人とも難しい顔が続いた。
どうにも、それ以上の言葉が出なかったのである。
光が寝入った後、ほぼ1時間後、時計は午後4時を少し過ぎたところ。
ルシェールは、光の唇が、かすかに動いたところを見た。
本当に小さな声でブツブツ言っている。
ルシェールは、光の手を握りなおし、やさしい声をかけた。
「光君、なあに?」
ついでに、少し冷たい濡れタオルで、光の額の汗を拭いた。
光の目が、少し開いた。
「あ・・・ルシェール・・・ごめん・・・寝ちゃった」
まずは、ルシェールに謝った。
ルシェールは、首を横に振る。
「謝ることなんかないよ、光君もみんなも、頑張っていたもの」
「それで解決したんだから」
光は、うれしそうな顔。
そして、次の言葉は、恥ずかしそうだった。
「甘い物が食べたくなった」
ルシェールは、もう、おっとり娘ではなかった。
そのまま、光を起こし、思いっきり抱きしめている。