視肉と太歳の始末
まず、夥しく倒れている人々の身体から、赤黒い霧状のものが浮き上がった。
そして、そのまま、鳥神カルラの上で輝き続ける八咫鏡の中に吸い込まれていく。
そして阿修羅は、九天玄女に目で合図。
九天玄女が頷くと、阿修羅はまた、不思議な呪文を唱える。
鳥神カルラの上の由紀が、叫んだ。
「すっごい!大きな肉の塊が・・・中華街の空に浮かんだ!」
「豚肉?よくわからないけれど、プヨプヨの白っぽい肉!」
圭子は、目を凝らした。
「おそらく視肉と太歳の合成肉、阿修羅が呪文でまとめちゃったんだ」
奈津美は、フフンと笑う。
「で、そのまま空を飛ばして山下公園に・・・と・・・」
春奈は、目を丸くした。
「あれ?みんな普通に歩きだした・・・お医者さんも看護師さんもキョトンとなっている」
美智子は笑い出した。
「これじゃあ、出番がないって・・・」
しかし、すぐに真顔に戻った。
「いや、万が一のケアかな」
ニケがソフィーの顔を見た。
「そろそろあなたも、動きなさい」
ソフィーもすぐに承知した様子、途端に頭上には光輪、背中には羽が生えた。
そして、鳥神カルラから舞い上がる。
空中に浮かんだソフィーの横には、もう一体の、頭には光輪、背中に羽を生やした異形が出現した。
ソフィーは、その異形に、ニッコリと笑う。
「ミカエル様、ご一緒に」
なんと、その異形は、天使長ミカエルだった。
ミカエルもソフィーに言葉を返す。
「ああ、ソフィー、実は大天使ガブリエル、まずはこの合成肉を山下公園に着実に運ぶのが、阿修羅様の御指示」
「落としてしまっては、元も子もない」
大天使ガブリエルは、ククッと笑う。
「それにしても、まさか、こんな風にとは思いませんでした」
「格闘をしたくて欲求不満の神霊には、それなりの格闘を」
「秘術を使いたい神霊には、それなりの秘術を」
天使長ミカエルも笑い出した。
「しかも、ルシェールを使って、イエス様の秘術も使う・・・これは面白い」
「そして、最後には、八部衆の見せ場を作る」
さて、大天使ガブリエルと天使長ミカエルが、中華街から運んだ「視肉と太歳の超巨大合成肉」は、無事に山下公園上空にて停止した。、
「さて・・・」
それを確認した阿修羅は、その手を胸に前で合わせる。
すると、上空に超巨大化した、コワモテ顔のクバンダ神が出現した。
「目一杯食いつくすといい」
阿修羅の声が、上空にまで響いた。
華奈が叫んだ。
「あ、赤黒い霧が、全部・・・大きなお肉の中に!」
由香利も叫ぶ。
「そのお肉が、クバンダ神の大きなお口に、吸いこまれていく!」
美紀は、笑い出した。
「まあ、クバンダ神、美味しそうに」
圭子がつぶやいた。
「これで、肉関係の悪霊の始末は終わった」
「でも・・・もう一体・・・白蛇精」
奈津美が、ポツリと一言。
「あの悪霊には、阿修羅よりは、光君のほうが面白い」
ヒバカラ神が、その奈津美の言葉で、クスッと笑っている。