巫女たちのテレビ会議(2)
春麗は、また雰囲気が違う。
「圭子様!春麗です!光君のお守りと、お嫁さんの候補、いや、もう確定かなあ!光君の滋養強壮には中華が一番!私はカンフーも剣も槍も弓も何でもできるよ!だから、光君を安心して任せて!私ね、光君、大好きなの!」
とにかく、超明るい、そしてキビキビとしている。
これには、他の候補者巫女たちは、「口あんぐり」。
圭子たちの母親世代は、大笑い。
光は、キョトンとなっているだけ。
ただ、「光のお嫁さん判定係」を自認する楓は、興味深そうな顔で、春麗を見ている。
それでも、光が口を開いた。
「ねえ、座ろうよ、シュークリームとエクレアは、奈良の人たちには申し訳ないけどさ」
「それでさ、何で、ここで話し合いするのかも、イマイチわからないんだけど」
いつもの、「ハンナリ、間延び声」にはなっているけれど、さすがに巫女たちも、このままでは何も進まない。
ようやく、光の言葉通り、全員がコタツ前の席に座る。
圭子が話し始めた。
「今日、こうして集まっていただいたのはね、今回の戦いの話なの」
「つまり、今までの敵とは異なるタイプとの戦いになると思われます」
「そして、それがわかったのは、世界魔術協会からの連絡」
「今までは、ミノタウロス、ドラキュラ、そして暗闇の神というような、力は凄いものがあるタイプで、何とか勝利した」
「そして、世界魔術協会の新たな不安としては、人間や各諸生物、そして死霊まで含めて精神の根源的な力を悪用する術者が、世界のどこかに生まれ、日本に向かってきているらしいとのこと」
「その術者は特異な魔力を持ち、混沌、それも世界秩序を完全に崩壊することのできるような混沌をまき散らすことができる」
圭子は、そこで、一呼吸置いた。
顔も厳しくなった。
そして、言い放った。
「かの呪術者は、世界魔術協会に言わせれば、若く美しい女性」
「そして彼女の目的は、光君、光君の遺伝子」
圭子の話に巫女全員が姿勢を正した。
圭子の後を、美紀が続けた。
「宗教史的に言うと、世界魔術協会は、かなり深い歴史を持っています」
「おそらく紀元前、イエスの生まれるずっと前から、いわゆる宗教者、巫女、霊媒師、占い師、陰陽師、道士、祈祷師、様々な形態はあるけれど、一定の関係、争いもあったけれど、相互に一定の関係を保ってきた」
「その中で、やはり彼らも生活をしていかなくてはならない」
「その上で、時の権力者に取り入り、収入を得るために、攻撃魔法、守る魔法、混乱の魔法を開発した」
「ただ、攻撃にしろ、守りにしろ、相手に抗する正邪で、ある意味、わかりやすいものがある」
「難しいのは、混沌なの」
「正が邪になり、邪が正になる、あるいは、どちらともつかない」
「そうやって、混乱させ、混沌とした世界を創り出してしまう」
美紀の顔が曇った。
春奈は、難しい顔で話しだした。
「そう言われても、具体的に光君に対して、何をしかけてくるのか」
「あるいは光君以外に対して、何をしかけるのか」
ソフィーは、その目を閉じて、必死に探っている。
おそらく「観音力」を使っているようだ。
ルシェールも、おっとり顔ではない。
「うーん・・・目の前の一つ一つかなあ、わからないなあ、マリア様に聞くかなあ」
由紀は腕を組んだ。
「とにかく、光君の結界強化だ、それで、教室でも、あの並びになったんだ」
由香利は、印を結んだ。
「とにかく、この日本で、そんな混沌は許さない、天照様にお願いする」
由香利が印を結ぶと同時に、華奈もやはり天照の巫女、同じ印を結んでいる。