横浜中華街に異変?鳥神カルラの背中に
目を閉じ、黙っていた光が、ようやく動きを見せた。
ダージリンを一口含み、目を開けた。
そして、春麗の顔を見た。
春麗も光の目を見て、ハッとした様子。
光は、春麗を見た後、ソフィーの顔を見た。
そして、いつもとは違う声。
「ソフィー、急がないと危ない」
「コバエが動き出したようだ」
ソフィーは、光の言葉で、一瞬目を閉じ、またすぐに開いた。
「ほんとだ、マジで危ない」
「・・・でも・・・どうやって?かなり距離が離れているよ」
その光と春麗、ソフィーの異変には、全ての巫女が反応し、身構えている。
代表して圭子が尋ねた。
「光君、横浜の?」
圭子は、光の心を既に読んでいたらしい。
光は、本当に厳しい顔。
「うん、中華街の関帝廟前が危険」
「まずは、生物兵器、つまりウィルスかな・・・それと・・・」
そこまで言って、いきなり立ち上がった。
「そういうことになると・・・」
叔母奈津美も立ち上がった。
そして、何か不思議な呪文を唱えた。
途端に、巨大な鳥の姿をしたカルラ神がホテルの天窓から見えている。
光は、叔母奈津美に頭を下げた。
「ありがとう、助かる」
ここでも、途端に天空に浮かぶカルラ神から声がかかった。
「急げ!全員乗れ!」
「かなり危険だ!」
気がついた時には、既に一行全員が、光を含め、巫女全員がカルラ神の上に乗り、もの凄いスピードで、上空を異動している。
また、カルラ神の背中には、見慣れた他の八部衆の神々も同じように乗っている。
その中から、まず、まとめ役のゴブジョー神が光に状況を報告に来た。
「光君、いや、阿修羅様、いきなりで申し訳ありません」
「中国からの貨物に紛れて、悪神が横浜中華街に入り込んだようです」
「今は大天使ミカエルが監視を行っています」
「それと、金剛力士二体は、現在は臨戦態勢です」
春麗も心配になったのか光の隣に座った。
「もしかして・・・視肉と太歳かな」
ゴブジョー神が、その春麗に真顔で頷くと、光は春麗に声をかけた。
「春麗、みんなにわかるように説明してくれないか」
「視肉と太歳といっても、中国以外ではなじみがない悪神になる」
春麗は、光の頼みを受けて、説明をはじめた。
「簡単に言うと、視肉と太歳は、どっちも単なる肉の塊にしか見えない妖怪、彼らには手とか足とかの器官はない、複数の目玉はついている」
「そのなかで視肉は、二つの眼球がついた牛の肝臓のような形をした、巨大な肉塊の妖怪」
「確実に命があるけれど、食事そのものは摂らない」
「この肉塊から、取った肉は大変な美味、しかし不思議なことに、その肉は再生する、元に戻ってしまう」
「名山、名水の湧く野山とか、古代の帝王の墓には必ずいる」
春麗は、ここで一呼吸、次に太歳の説明をはじめた。
「太歳も、同じような肉の塊だけれど、違いとしては、土に埋まっていることと、2個ではなくて幾千の目が全身についていること」
「美味しいだけの視肉と違って危険なのは、太歳の肉を食べると全員が1年も経たずに必ず死んでしまう非常に危険な肉であること」
光がつぶやいた。
「関帝廟があり、中華食の集まる中華街、観光客が押し寄せる中華街に・・・」
カルラ神の背中に乗る全員が、厳しい顔になっている。




