「候補者巫女」たちの、それぞれの反応
光とルシェールが「仲良く手をつなぎ」、純白の祭壇へと向かう姿が、特に年齢の近い「候補者巫女」たちには、気に入らない。
華奈は、焦りのあまり、いつもの支離滅裂。
「あーーーー!何だっていうの?あーいう抜け駆けをするの?それは禁止って憲法に書いてあるでしょ?」
従妹の楓も焦った。
「マジ?まさか祭壇の前で、秘薬を聖母マリア様にもらって、愛の妙薬と称して、あの二人がキスするの?」
由香利は顔を真っ赤にして怒った。
「いくらなんでも、それはないって!ルシェールもルシェールなら、光君も光君だよ!大聖堂の時は単なる治療と思ったから許してあげたのに」
由紀は泣き出した。
「そうだよ、あれは光君が瀕死の状態だったから、人工呼吸みたいなものと思ったから・・・でも今は瀕死でも何でもないじゃない、それは反則も甚だしい!」
キャサリンは前に進む足がすくむ。
「まずい、これは・・・あのルシェールが本気?しかも聖母マリア様まで・・・」
「容認されちゃったの?」
サラは厳しい顔。
「うーん・・・いくらルシェールが超強力としても・・・これは認められない・・・瞬間ダッシュで奪い取ろうか」
すでに身をかがめ、ジャンプの姿勢を取り始めている。
春麗は既に臨戦態勢。
「カンフーなら負けない、何が何でも阻止する。ルシェールの光君強奪は認めるわけにはいかない」
さて、年齢が近い「候補者巫女」等は、そんな感じで「我を失ってる」けれど、少し年齢が離れた「候補者巫女」二人は冷静。
ソフィーは鼻で笑う。
「は?聖母マリアに受胎告知したのは、大天使ガブリエルなの、その巫女は私」
「それにあの薬の中身もわかった」
「ルシェールが秘薬なんて、もったいつけるから、アホの光君が反応しちゃっただけ」
春奈も、馬鹿馬鹿しいといった顔。
「おそらく、殺虫剤とか、そんなのだよ」
「蠅の神を退治するために、いろいろ神霊界でも工作しているんだから」
「それと、光君のナマケグセを退治する薬も作ってほしいくらいさ」
母親世代巫女は、ガッカリしている。
圭子
「楓も、まだまだ・・・育たないなあ・・・」
ナタリー
「ルシェールも、見え見え過ぎの仕掛け、あれなら簡単に見抜かれる」
「お花畑って場所は、当然虫がいる、でも、ここにはいない」
「そうなると、殺虫作用を持つ何かの仕掛けがあることは、すぐにわかるはず」
美紀
「華奈の未熟さが恥かしい、抜け駆け禁止が憲法に書いてあるとかないとか・・・どうして華奈って、おバカなことを口走るのかなあ」
奈津美
「光君は、どこまで考えているのやら・・・菜穂子姉さんも心配でしかたがないと思うよ」
さて、「後方」では、様々な話があったものの、光とルシェールは純白の大理石の祭壇の前に立った。
そして、ルシェールが、ようやく光から手を離して、胸の前で組み、何か祈りの言葉をつぶやくと、また異変が起きた。
光が空を見上げると、大きな光輪が浮かんでいる。
「あれは・・・・」
光は、うれしそうに笑っている。