外国人転入生巫女の情報
さて、結局は「いつもの朝食」となってしまったけれど、食事が済めば、三人そろって、登校することになる。
そして、玄関を出ると、ソフィーが立っている。
光が
「なんだ、ソフィーいたんだ、入ってくればいいのに」
「トマトリゾット、本当に美味しかった、さすが春奈さんだよ」
とソフィーに声をかけると、ソフィーは、ニヤリ。
「まあ、私もね、ダイエットというものがあるの」
「それにさ、今日の朝、私もトマトリゾットでね、それも魚介類の出汁でね」
と光にはウィンク、春奈には「フフン」と胸を張る。
そんなことをされた光は、「?」と、いつもの無粋顔。
春奈は
「ふんだ!どうせ、ニケが作ったんでしょ?・・・たく気に入らない」
と思うけれど、さすがに大人、口には出さずに違う言葉で反撃を始める。
「そうねえ、一度、ニケにもここに泊まってもらって、料理実習を受けようかなあ、私、ニケさん大好きなの、美人だよねえ、ほんと、若い頃は」
「そうねえ、ソフィーは忙しいだろうから、残念ねえ・・・」
と返して、フフンと笑う。
ただ、光と華奈は、そんな大人巫女のバトルには付き合わない。
光はボンヤリと歩み、華奈は光の手を、このスキにつないでしまおうとチャンスを狙っているけれど、その瞬間にドキドキして手を握れない。
それと、やはり華奈にとって、料理の話題は「墓穴を掘る」に直結するので、できれば避けて通りたいのか、引いている状態。
さて、そんな道中も最寄りの駅に着く頃には、少し様子が変わってきた。
春奈が、突然、教師しか知らない話を始めた。
また、話し始めた表情も、真顔になっている。
「あのさ、今日、始業式なんだけどさ」
「校長先生が言うのに、三年生の転入生として、三人の外国人子女が入るってことなの」
「国籍としては、中国、ギリシャ、アメリカ」
春奈がそこまで言った時だった。
華奈の表情も真顔になった。
「ねえ、春奈さん、その外国人子女って・・・美人?」
「まさか、光さんのクラスに入らないよね」
春奈は、その華奈の真面目顔に、思わず笑ってしまった。
そして、ついつい「生の反応」を華奈にぶつけてしまった。
「もう・・・早くも不安?会ってもいないのに・・・」
「美人とか何とかの前に自分が努力したらどうなの?」
華奈は、そんな春奈の笑いにムッとして黙ってしまう。
小声でブツブツ言い続ける。
「・・・ったく・・・そういう春奈さんの今まで教えてくれなかった秘密主義とか、美人かどうかも教えてくれない不誠実な態度がいけないの」
「もし、美人で妖しい連中だったら、どうするの?」
「光さんは、アホなんだから、そういう人にホイホイフラフラついていくに決まっているんだから・・・」
ソフィーが、華奈のそんな「ブツブツ文句」に反応した。
「まあ、華奈ちゃんの言うことも、もっともだなあ」
「華奈ちゃんに限らず、候補者たちは、不安だよね」
「それにさ、どうして、あのリスク管理抜群、最上級エクソシストの校長先生がこの時期に、中国、ギリシャ、アメリカからの転入生を受け入れたのか」
「何か、そうしなければならない理由があるのかもしれない」
そして、ソフィーはその目を輝かせながら、何かを探っている。
そんな状態が続く中、光だけは至って平静。
いつものボンヤリ顔のままだったけれど、学園が近づく頃になって、ようやく目をはっきりと開いた。
「ああ、・・・これは、とあるお方からの依頼」
そこまで言って、光の目が輝いた。
その光の輝く目で、姿勢を正した春奈、ソフィー、華奈に対して、光は厳しい顔になった。
光は、目を輝かせながら、言葉を続けた。
「その三人は、巫女、世界でも最高峰の呪力を与えられた三人」
「今回の戦いも、かなり厳しいものになるため」
「体力はもちろん最も深くて強い精神力も要求される」
春奈、ソフィー、華奈は、これが「阿修羅の言葉」と、即座に理解した。