奈良氷室神社(2)
光が氷室神社本殿前で祈る姿を見て、母親世代の巫女たちは、様々考える。
圭子
「おそらく阿修羅の戦略なんだろうけれど、氷を何に使うのかな」
奈津美
「蜘蛛も使うよね、朝、子供たちが大騒ぎになっていたけれど」
美紀
「光君ががんばって、一人で春日山に入って、捕獲してきたんでしょ?」
美智子
「春奈は、気づいていながら出遅れたの、そういうところが、おっとりなの」
ナタリー
「いや、おっとりでは、ルシェールも同じ、のん気に構えすぎて一歩遅れることがある」
ニケ
「ソフィーも、賢いフリをしているだけ、案外ウカツ」
圭子
「私の楓なんて、蜘蛛を見て大泣きになるくらいで話にも何もならない」
奈津美
「でも、蜘蛛じゃなかった、氷の話だよね」
美紀
「蠅の神を氷漬けにするのかな」
美智子
「氷室神社は、タイとかコイを氷漬けにするけれどねえ・・・蠅を氷漬けにしても、見栄えが悪いかなあ」
ナタリー
「確かに氷の環境では、蠅は活動できないけれど」
ニケ
「蜘蛛の網にかかった瞬間に、氷漬けになるのかな」
・・・・様々、考えるけれど、思い浮かばないようだ。
母親世代に批判された「候補者巫女」たちは、反発しながらも光つまり阿修羅の意図を探る。
春奈
「どうして、ああ口が悪いのかなあ、おっとりってねえ・・・ついつい出遅れただけなのに、でも、光君はどうしたいのかな」
ルシェール
「私の親も同じ、何かにつけて小言ばかり、それでいてアドバイスはなし」
「うーん・・・光君ねえ・・・氷の魔法でも使うのかな」
楓
「だって蜘蛛嫌いだからしょうがないじゃない、マジで気に入らない」
「ほんと、腹立ったから後で、アイス二つ食べる」
「光君も意地悪だから、光君の分を食べちゃう」
華奈
「そんなことより、光さんの意思を探ろうよ、あんな年寄り巫女の言葉なんて聞くことないって」
ソフィーも、ずっと「母親世代への反発言葉」を考えていたけれど、しかし日本政府としての立場もある。
それよりは、光の考えを探ろうと思った。
しかし・・・全くその考えが読めない。
「マジ?光君ってアホ?実は何にも考えていないとか」
ソフィーの透視能力を目一杯使っても、光の考えは把握できないらしい。
そういう奈良育ち、奈良関連ではない巫女の、由香利と由紀だけが、焦らず光の様子をじっと見ている。
そして、由香利と由紀は、「何か」に気付いた様子。
由香利
「ねえ・・・まさか?」
由紀も由香利に反応した。
「・・・そんなことができるの?」
二人とも、その目を丸くしている。