下校時でも、先を越される華奈
さて、光たち一行の下校は、キャサリン、サラ、春麗が加わったこともあり、かなり周囲の注目を集めることが想定された。
ソフィーは、そこで一計を案じた。
「八人乗りのワゴン車を用意しましょう」
「何しろ、光君、春奈さん、由紀さん、華奈ちゃん、そして私」
「新しくキャサリン、サラ、春麗で、計八人」
と言うけれど、まず光は浮かない顔。
「やだ、車って、赤信号とか渋滞とか面倒」
春奈も
「光君の隣争いが発生するからだめ、私限定にしてくれるなら賛成」
由紀は
「同じクラスの責任として、私が光君と腕を組んで離しません、無駄な出費はよしましょう」
華奈にいたっては
「由紀さんが光さんの右、私が左、そうして歩けば一切問題ない」
「ねえ、私だって由紀さんに一時的にでも妥協するんだから」
と、顔を真っ赤にして主張する。
ただ、華奈の主張は、由紀に「先を越されてしまった」ので、実は一瞬の思いつきに過ぎない。
すると、キャサリンが口を開いた。
「私は、日本のJRか地下鉄とか私鉄に乗ってみたいんです、そうでないと、日本の実状がわかりません」
サラも
「そうですねえ、ギリシャではそういうことがないので、とても興味深いのです」
春麗は
「ねえ、さっさと行こうよ、渋谷の街も興味あるし!」
そんな状態で、ソフィーの「一計」はあえなく無駄なことになった。
ソフィーとしては、頭を抱えてしまう。
「全く、光君も、この巫女連中も、警護というものの発想がまるでなし」
「由紀ちゃんはともかく、華奈ちゃんって、どうしてああいう発想になるの?」
「この渋谷の雑踏の中で、三人が手をつないで歩くというのが、どれほど他人の迷惑になるのかって、その意識のカケラもない」
ということで、ソフィーとしても、どうにもならなかった。
それに、ルシェールも由香利の「とにかく早く来い」の要望も強い。
結局、一行は周囲の注目を多大に集めながら、渋谷駅前の雑踏を歩き、井の頭線に乗り込んだのである。
しかし、結局、由紀と華奈の「光の腕組み」ポジションは、ここでも獲得ができなかった。
光が歩きはじめると同時に、キャサリン、サラ、春麗が光の周囲を取り囲んでしまった。
かろうじて、由紀が光の右隣に立つ状態。
華奈は、そこで気づいた。
「あれは、光さんの教室での座席配置と同じだ」
「そうなると、あれが光さんの結界?」
「それならば、許せるかなあ」
ソフィーと春奈も、珍しい華奈の分析を読んだ。
春奈
「華奈ちゃんにしては、当たりかも」
ソフィー
「たまたまさ、どうせ華奈ちゃんでしょ?」
春奈は、珍しく分析して、得意顔の華奈をチラッと見る。
そしてフフンと笑う。
「ということは、華奈ちゃんは結界が出来ないんだ」
ソフィーも同じことを考えた。
「だってさ、華奈ちゃんって、結界呪文の間違いが多すぎてさ、すぐに切れそうになるしさ」
そんなことを言われている華奈は、それでもめげない。
「ふんだ!なんだかんだと言って、私が一番若くて、可愛いの」
「スタイルだって、少しずつ良くなっている」
「負けやしないさ、そんな簡単に」
と、思うけれど、結局、井の頭線車内でも「光の遠く」の位置に立ってしまっている。