蜘蛛の行方 ソフィーの嘆き
光の顔は、厳しくなった。
そしてルシェールの顔を見る。
「この蜘蛛は、しかるべき相手に預けることになる」
ルシェールも光の表情の変化を見て取った。
「・・・そうなると・・・政府機関?」
光が頷くと同時に、ソフィーが顔を見せた。
そして、まだバスローブ姿の光を見て少し文句。
「・・・ったくノロマだなあ、でもそれはいいけどさ」
と、蜘蛛をしっかりと見る。
そして光に尋ねた。
「この蜘蛛ね・・・」
光は、厳しい顔で、ソフィーに
「その通り、これをしかるべき機関に」
「それから蜘蛛の背中の呪文は暗号」
「この解き方を知るのは阿修羅のみ」
その光の言葉で、光のバスローブ姿に文句顔のソフィーはもちろん、全ての巫女が姿勢を正すと。光は、両腕を左右に一旦開き、そして胸の前で合わせた。
阿修羅のポーズの感性と同時に、蜘蛛の姿が消えている。
それを見た巫女たちは、騒然。
部屋の中をキョロキョロと見回すばかり。
華奈
「すっごい!でも、これを見たことあるよ」
華奈は、以前、この「飛ばし」の技を見たことがあるという。
その記憶を、由香利も思い出した。
そして、華奈の言葉を補足する。
「そう言えば、清水君の事件の時だよね」
「あの時は、馬鹿そのものの若い警察官が、産直市帰りの老人女性が運転する軽四トラックに、なんと煽り運転を行った」
「軽四トラックを運転する老人女性は、全くの安全運転だったんだけど、突然警報鳴らして警察車両に猛スピードで煽られて、気が動転してしまってスーパーの前の道を歩いていて清水君をはねてしまい、また老人女性は壁に激突して即死」
「光君とか私たちは、当然警察官に抗議をしたんだけど、逆に公務執行妨害でつかまりそうになった」
「また、その悪徳警察官は、A新聞社の当時のお偉いさんの息子」
「そして、その取材で、A新聞社の記者がうるさくつきまとってきたので、飛ばしの技を使って飛ばしちゃったの」
ただ、ソフィーは、光の顔を見て、少々不安な顔。
「それでね、光君、いったい、どこに飛ばしたの?」
そう聞きながら、目を閉じている。
そして、その場所を読んでしまったらしい。
口を尖らせている。
「・・・マジ?私の部屋?」
「蜘蛛の巣の部屋になるの?」
つまり、ソフィーが透視の技で読んだ「蜘蛛の飛ばし場所」は、ソフィーの部屋ということになる。
光が口を開く。
「だって、ソフィーは政府機関でしょ?」
「貴重な蜘蛛だし、暗号もあるしさ」
「結界も強い部屋だしさ」
「その上、ソフィーが管理保護すれば万全と思うよ」
至って、平静、普通の話し方である。
ソフィーは、それでも抵抗し、文句を言う。
「少なくともさ、私に一言あってもいいでしょ?」
「まあ、光君の言うのも、ごもっともだけどさ」
「ったく・・・気に入らない・・・」
しかし、光は途中から、何も聞いていない。
それよりは、モゾモゾと動き出している。
その動きを楓が読んだ。
「光君、着替えたいってこと?」
光は、ニッコリと頷いている。