不思議な大きな蜘蛛と光の不在
母親世代巫女と、「光のお嫁さん候補者巫女」たちの対策会議は、午後9時に終了し、それぞれが部屋に戻った。
華奈は、「スキあらば」と、光との同室を画策したけれど、周囲には能力の高い巫女ばかり、結局、スゴスゴと自分の部屋に戻るしかなかった。
ただ、夜は全員がスンナリと眠った。
特に都内から来た巫女たちは、伊勢神宮外宮、内宮での不思議な体験と、東大寺での浄土等の体験もあり、実は疲れていた。
それと、次の日には様々な見学参拝などが予定されている上に、光が「春日野で蜘蛛とか他のこと」まで言い出したので、眠って体力と気力を回復する必要があった。
さて、そんな夜を過ごした一行は、朝を迎えた。
そして、光を待つ、「候補者巫女」たちが光の部屋の前で集結しているけれど、主役の光の部屋のドアが開かない。
まず、巫女たちの中で、楓が文句を言い始めた。
「もーーー!ほんと、朝はダメだなあ!」
「寝坊助で、全く成長がない」
「杉並の家でも、きっとそうでしょ?」
「まったくねえ・・・春奈さんが甘やかすからこうなるの」
「華奈ちゃんだって、二階に駆け上って大騒ぎするだけでしょ?」
「ほんと、全く役に立たない」
楓は、文句を言い出すとキリがない。
ただ、本音としては、「散歩より、朝ごはん」らしい。
最後には「ああ、お腹減った」という、「直接的な」文句になっている。
さて、楓に「いつもながらの文句」を言われてしまった華奈は、途中からあることに気がついた。
「何か、ドアにすき間がある」
「・・・って・・・鍵をしていない?」
「マジ?そこまでアホ?」
と思って、ドアを軽く押す。
華奈の「気づき」は、当たっていた。
「光さん、鍵かけてない・・・」
光の部屋のドアは、スンナリと開いてしまった。
楓がそこで、ズンと部屋に入る。
「私は従妹、立場が違う」
「もし寝ぼけていたら、引っぱたく!」
と言い張り、他の巫女をけん制して入っていく。
他の巫女たちは、それでも部屋に入ることは、ためらった。
やはり、うら若き巫女たち、万が一、光が着替え中となると、恥ずかしいらしい。
ただ、聞こえてきたのは
「あれーー?光君、どこ?」
そこまでは良かった。
次に聞こえてきたのは、
「きゃーーーー!ダメーーーー!」
「助けてーーーー!」
楓の先ほどまでの威勢とは全く異なる悲鳴。
キャサリンの血相が変わった。
「入ります!」
サラも、グイと華奈を押しのけて部屋に入る。
春麗も、負けてはいない。
「何があったの!」
飛び跳ねるかのように、サラに続く。
ついつい遅れてしまう由香利と由紀も「それなら仕方がない」と、光の部屋に入った。
そして、震えて座り込んでしまった楓の前を見ると
由香利
「すごい・・・何?この蜘蛛」
由紀
「大きくて・・・え?背中に不思議な呪文、しかも梵字?」
しかし、それ以上に不思議なことは、光が部屋の中に見えないことである。




