豪勢なフランス料理とお饅頭?
夕食の会話をリードするのは、やはり圭子。
まずは外国からの転入巫女たちに声をかける。
「キャサリン、サラ、春麗、本当に御助力ありがとう」
「やはり目の前で見ると、本当に若くてきれい、そして深くて強い御力を感じます」
キャサリンは、その性格から、キチンと応える。
「はい、私共といたしましても、光君は大切なお方、光君と良い関係を持つことは、私共の将来にも多大な効果があるのです」
「ただ、それ以上に、この難局を乗り切ることは、私共のことばかりではなく、人類全体にとっても、大切なこと」
「そのような折に、協力が出来て、私共も幸いです」
「アーサー王も、早く剣を奮いたいとまで、言っておられます」
「それと、私個人も、光君と、いつまでもご一緒したいのです」
サラは、どっしりとして力強い応え。
「今までの光君の動きとか、対応力を拝見しまして、やはり並々ならぬ可能性と深い力を感じています」
「何しろ、渋谷上空で阿修羅に変化、航空機を素手で掴むなど、アルテミスでさえ、予想もできませんでした」
「それから私たち巫女をはじめとして、様々な御神霊を上手に配置し、有効にその力を発揮させる」
「やはり、最高神阿修羅の御力と、感服しております」
「今回の闘いが終わったにしても、いつまでもお側にお付きしたいと切に願っております」
春麗は、うって変わって明るさ満点の応え、
「はい、こちらこそ、ありがとうございます」
「九天玄女様は、光君に阿修羅様が本格的に入った時から、注目して見ておられました」
「とにかく、目を見張るような動きということで、私も九天玄女様にお祈りをするたびに、話を聞いていてね」
「それで、光君と日本を狙った悪神の動きがあるってことなので」
「私も志願して、来たんです」
「そしたら、光君は目の前で見ると、超可愛いし、巫女さんたちも素敵で面白いし」
「私も、今回のことが終わっても、ずっといることにします」
外国からの転入生巫女の話は、概ね、光を褒め称え、今回の闘いが終了しても、光の側を離れないということ。
その話に、日本育ち巫女たちは「うっ」という顔になるけれど、肝心の光は食べることに必死。
圭子と、外国人転入巫女の話などは、何も聞いていない。
そして、この豪勢なメニューを食べているなか、全く違うレベルの話を口にする。
光
「ねえ、春麗、明日は林神社に行こうよ」
「お饅頭の神社で、祀られているのは中国の人」
「近鉄奈良の駅にすごく近いところにある」
春麗もニッコリ、すぐに応えた。
「うん!行く!必ず!それも楽しみだった」
圭子も笑いながら説明をはじめた。
「正式には漢国神社、近鉄奈良から50mの距離」
「祭神としては、林浄因命、読み方は、りんじょういんのみこと」
「林神社は我が国で唯一の饅頭の社」
「春麗は詳しいと思うけれど、林浄因命は中国淅江省の人」
「貞和5年だから、西暦では1349年に来日」
「その後は、その漢國神社のある所に住まわれ、日本では最初の饅頭をお作りになり好評を博し、その後は足利将軍家を経てついには宮中に献上するになったとか」
「今でもね、毎年4月19日には菓祖神として林浄因命の偉業を讃えることと、、菓子業界の繁栄を祈願するための饅頭まつりが執り行なわれるよ」
「その時には、全国からたくさんの饅頭が献上されます」
そんな話の中、楓は思った。
「普通、こういう豪勢なフランス料理を食べている時に、お饅頭の話をする?」
「やはり、光君はアホだ、やはり私がしっかりと教育するべきだ、これは従妹としての大切な務めだ」
とまでは思うけれど、楓の思いも長くは続かない。
何しろ、口に入れたステーキがかなり美味しい。
結局、楓は「食べるだけの人」と化してしまった。