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十一面観音様からの御言葉 そして異変

光の輝きと十一面観音の輝きの中で、巫女たちは全く身動きができなくなった。

そして身動きどころか、言葉さえ出すことができない。

ただし、光の動きは見ることができる。

そのため、巫女たちの意識は、光と十一面観音の様子に注意が集中することになった。



光は、両腕を真っ直ぐ真横に開き、そして胸の上で合わせた。

阿修羅の合掌のポーズである。

と、同時に、十一面観音の前の光は、阿修羅に変化した。


四月堂の中で、次に聞こえてきたのは阿修羅の声だった。

「お久しぶり」

阿修羅の声ではあるけれど、いつもの厳しめな雰囲気ではない。

やさし気な、響きがある。


「はい、お待ちしておりました」

明るく可愛らしい声が聞こえてきた。

巫女たちの目は、十一面観音に注がれた。

つまり、その声が十一面観音の方から聞こえてきたから。


阿修羅は、前に歩いて、十一面観音の手を取った。

「相変わらず、美しい」

すると、十一面観音の像そのものが、動いた。

その手を握る阿修羅の手を、慈しむかのように、しっかりと握りなおしている。


十一面観音は、また言葉を発した。

「本当に、阿修羅様、ご活躍で」

「お見事です」


その言葉の時点で、巫女たちはさらに驚いた。

金色に輝いていたはずの十一面観音が、いつのまにか人間と同じ、白く美しい肌に変わっている。


阿修羅が口を開いた。

「いやいや、活躍の支えは、今日、ここに連れてきた光君と、光君を支える巫女たち、決して阿修羅だけではない」

「お地蔵さんをはじめとして、様々な御神霊の助力も大きかった」


十一面観音は、その言葉がうれしいようだ。

笑顔で、阿修羅まで歩き、その隣に立つ。

「阿修羅様、私からも、この子たちに」


その言葉で、阿修羅と十一面観音は、一緒に巫女たちの目の前に立った。

十一面観音は、巫女たちを見つめて語り出す。


「光君をしっかり支えて、本当に大変な辛いお仕事を懸命に」

「心から、感謝しています」


巫女たちも、十一面観音からのまさかの御言葉、必死に耳をそばだてる。


十一面観音は、言葉を続けた。

「本日も、お伊勢様の外宮の大神様、また内宮の大神様から、尊い御力をお授かりになったことだと思います」

「本当にありがたいことです」

「日ごろの皆様方の、努力をお認めになっておられるのです」


巫女たちは、身体も動かせず、口を開くこともできないけれど、ここでまた異変を感じた。

何か、不思議な香りがお堂の中に漂い始めたのである。

ただ、不思議な香りと言っても、鼻を突くような刺激の強い香りではない。

まるで美しいお花畑にでも座っているかのような香り。

それでいて清浄にして、身体全体を癒すような香りである。


その不思議な香りに続いて、更なる異変が発生した。

四月堂の壁が全て消え去った。

また天井もない。


上に見えるのは、柔らかな白雲が浮かぶ青い空。

足元に見えるのは、青々とした草原。

そして、不思議な香りを含んだ風が、その草原に流れている。


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