またしても光の無粋 十一面観音様とご対面
ルシェールも、光の視線にすぐに気がついた、
そして、華奈を「ブンと押しのけ」光と腕を組んでしまう。
押しのけられた華奈は、ほぼ涙顔になっているけれど、その前の「華奈の言動」が他の巫女たちには、癪にさわっていたらしい。
全くフォローの一言もない。
ルシェールは、光に確認する。
「ねえ、マリア様のことでしょ?光君」
光も、その通りと頷いてルシェールに
「あそこに立って天を見つめているマリア様って、大好きなの」
「すごく純真で清らかな感じ」
「今日は時間がないけれどさ、明日晴れたら行きたいなあって」
押しのけられた華奈が「純真で清らかは、まるで私」とポツリするけれど、これも他の巫女から無視されている。
さて、ルシェールは、そんな光の言葉にニッコリ。
「うん、わかった、光君、それはお喜びになります」
と言いながら、ぐいぐいと光の腕を組む力を強くする。
そのサロンバスは、東大寺四月堂前に到着した。
周囲には手向山八幡宮があり、三月堂、二月堂等の大きなお堂もあるけれど、四月堂については確かに、小ぶりなお堂になっている。
「さて、お顔を」
光は、その腕をサッとルシェールから抜き、サロンバスから降りてしまった。
ルシェールあ然。
「マジ?早すぎ!ほんと!無粋!呆れる!」
と思うけれど、少し離れて華奈は、小さくガッツポーズをしている。
ただ、他の巫女たちは、そんな華奈とルシェールのバトルなど興味がない。
春奈はニヤリ。
「どうせ光君でしょ?誰と腕を組んだかなんて、忘れているって、光君にロマンスを求めても無駄」
ソフィーは、全くどうでもいい感じ。
「もう関心は観音様に移っているしさ」
そして、他の巫女は、同じ思いなのでコメントすら出さない。
光は、そんな巫女たちなど気にしない。
周囲も何も見ず、真っ直ぐに四月堂に入っていく。
そして、正面に立つ十一面観音をじっと見つめている。
その光に、他の巫女たちも続いた。
ただ、狭いお堂なので、ほぼ一杯な状態。
由香利が、スッと光の横に立った。
「すごい・・・可愛い・・・きれい・・・はぁ・・・」
「こんな・・・きれいな観音様、はじめて・・・」
由香利は涙ぐんでいる。
続いて由紀も光の隣に立った。
「ほんと・・・超美少女アイドルも、この観音様にはかなわない」
「お顔といい、その表情といい、スタイルといい・・・」
「お逢い出来てうれしい・・・光君、ありがとう」
由紀は観音様から目を離せなくなっている。
その由香利と由紀の発した言葉が全てだった。
他の巫女たちも、同じように感じたらしい。
結局全員が、涙を流し、十一面観音から目を離せなくなっている。
光と全ての巫女の目が、十一面観音に集中していると、異変が発生した。
まず、光の身体全体が、輝きはじめた。
そして、それに呼応するかのように、十一面観音が輝きはじめている。