実は難攻不落の光
さて、ルシェールは、悶々とした日が続いている。
そして、その悩みはいつも同じ。
「光君に私の思いが全く通じていない」
「クリスマスのコンサートで、せっかく唇を奪ったのに、光君は何を考えているのだろう」
「愛の妙薬としか考えていない、単なる治療法としか考えていないのかな」
「ほんと、信じられないくらい亀だなあ」
「でも・・・可愛いしなあ・・・大好きでたまらないしなあ・・・」
ルシェールは次に「対抗する巫女」について考える。
「まあ、由香利さんも由紀さんも強敵なのは認める」
「でも春奈さんは、少し歳が離れすぎ、ソフィーも同じようなもの」
「社会人と高校3年生では、かなり年齢差がある」
「まあ、華奈ちゃんは未熟過ぎ、性格も危なっかしいし、呪文を唱えさせても間違いだらけ、だから対象外、万が一そんなことになったら世界が滅びかねない」
・・・とまでは、今までの「対日本育ち巫女」へのルシェールの判定。
しかし、ルシェールにとって、さらに厄介な状況が出現した。
「うーん・・・あの新しい巫女たちかあ・・・」
「キャサリン・・・キリッとして格好いいしなあ、呪力も剣の力も計り知れない」
「サラは、スタイルでは私も負けそうになるし、呪力もすごいし、あの弓は半端じゃない」
「春麗は、すごく可愛いし、機敏だし、私たち西洋系の呪力とは異なる大中華の呪法を持つし、拳法から刀術まで戦闘はお任せタイプ」
ルシェールもかなりな呪力の持ち主、光の学園に現れた三人の外国人巫女をしっかりと「透視」しているようだ。
そんな悶々としたルシェールに、由香利から連絡が入った。
由香利は
「ねえ、ルシェール、どういうこと?三人の外国人巫女って」
いきなり、外国人巫女のことを切り出した。
ルシェールも実は同じ思い。
「うん、由香利さん、気づいたんだね、私もとんでもないって思うんだけど」
「要するにね、私たち日本育ち巫女では、心もとないっていう連中がいるみたいなの、それも失礼しちゃうんだけどさ」
由香利も、そこまでは読んだらしい。
「彼女たちの属する神霊グループだよね、それは読めた」
「でもさ、それはね、戦闘になったら、あの三人の巫女は武器を使えるからさ、強いことは認める」
「そうは言ってもさ、別に巫女を送ってこなくてもいいと思うんだ」
由香利は、別に巫女でなくても、戦闘力のある御神霊を送ってくれば充分と考えている。
ルシェールも、それに反応。
「そうだよねえ、日本には奈良に圭子さんって、すごい人がいるんだからさ」
「彼女にコントロールさせれば充分なのに」
「まあ、呪力もすごくて、それに加えて戦闘系の巫女を送ってきた」
ルシェールが少し考えていると、由香利が話を続けた。
「おそらく霊界グループの主導権争いも絡めた、校長先生の言う通りかな」
「光君の阿修羅の血を、自分たちの巫女に取り込みたい」
ルシェールは、難しい顔になった。
「でもね、無理やり迫っても、光君って無理」
「無理やり迫った私も進展がないし」
「春奈さんだって、一晩同じベッドでも、何事もなく」
「ソフィーだって、剣道の時は、しかたなく抱きかかえられて、それ以外は膝枕だけ」
「華奈ちゃんなんて、あやされている程度」
由香利も難しい顔で
「私も、いつも逃げられる」
と言うけれど、一つ思い出した。
「由紀さんだけが、裸で抱き合った、実は一番近い・・・」
ルシェールも、それを把握していたらしい。
「でもさ、そこまでいって、何も進展がないってのはね」
ルシェールの答えで、由香利も腕を組んでしまった。