ご対面 光はまた・・・
大騒ぎの楓の後からでてきたのは、春奈の母美智子だけではなかった。
楓の母にして光の父の姉つまり叔母の圭子と、光の母の妹、これも叔母の奈津美の顔が見える。
続いてルシェールの母ナタリーとソフィーの母ニケもそろっている。
その中で、まず圭子が大騒ぎを続ける楓を、ブンと押しのけた。
まるで有無を言わせない力強さ、さすが楓の母である。
そして、光たち一行に、しっかりとご挨拶。
「はい、お待ちしておりました」
「東京での様々なご活躍、ご苦労様です」
「それから、キャサリン姫、サラ姫、春麗姫につきましても、本当にわざわざ御苦労さまです」
楓が「・・・姫?」と文句を言うけれど、圭子は楓の足を踏んづけ、全く意に介しない。
キャサリン、サラ、春麗も頭を下げる。
キャサリンはいつもの通り、キチンと礼をする。
「ご高名な圭子さま、お目にかかれて光栄です」
サラも丁寧な頭の下げ方。
「この巫女界でもトップクラスの圭子さま、いつかゆっくりお話を伺いたいと思っておりました、今回はお招き本当に感謝しております」
春麗は、いつもにも増して明るい。
「圭子さま、春麗です!上海に住む母も圭子さんとお話をしたいって、言ってました、本当に逢えてうれしい!」
さて、そんな対面が行われているけれど、光は途中から落ち着かない。
しきりに、動きたい様子。
それを春奈が注意する。
「何焦っているの?光君」
「今は大切なご対面の時なんだよ」
ソフィーも、そんな光にいら立った。
「やりたいこととか、行きたいところがあるんだったら、はっきり言いなさい」
「わかっている?警備だってあるんだから」
少し言い方がきつい。
そんな光に他の巫女も注目していることが、光はようやく気がついたらしい。
ポツリポツリと話し出す。
「少し時間が遅いし、歩くにはちょっと大変なんだけれどさ」
しかし、それでは、全く意味が不明。
もともと光の言葉は、ほとんど曖昧になるけれど、言葉をそれでも続けた。
「大仏殿ではなくて、四月堂に行きたい」
「呼ばれているような気がする」
と、そこで言葉が止まった。
その光の心理は、特に奈良育ちの巫女には、わかりやすいものだった。
奈良育ちの巫女を代表して、叔母の圭子が笑いながら、光の心理を代弁する。
「要するに光は、東大寺の四月堂に行きたいってことだよね」
「それは、何か呼ばれている気がするということから」
「しかし、光君は、今のホテルからあまり歩きたくない」
「それは歩くと疲れる距離ということと、少々拝観時間の終了が迫っているというこだね」
光には、「アタリ」だったようだ。
ウンウンと頷いていると、周囲の巫女はボツボツと文句。
ソフィー
「素直に車出してって言えないの?情けない」
春奈
「そんなに辛い距離じゃない、結局ナマケモノ、体力不足、それで高校三年生の男子?呆れてものが言えない」
楓
「春奈さんの言う通り、呆れる、虚弱体質、私なら歩く、たまには走ったら?」
ルシェールまで呆れた。
「はぁ・・・可愛いけれど、世話焼ける・・・焼きたいけれど」
さて、華奈は「このスキに」とばかり、光の手をサッと握っている。