神様の食事VSお弁当?
少々の混乱の中、「豊受大御神様の前でのお食事」が終わった。
というよりは、正気である由香利と美紀の呪文により、外宮正殿前に全員が戻されたような感じ。
まずキャサリンが感想を述べた。
「古い日本の食事のようで、現在とは全く献立が違うけれど、素朴で滋養豊富な食事でした」
とても、満足している様子。
サラも、いろいろと思い出している。
「あまり調味料も油も使っていない、それでいて、味が濃い」
「身体の中まで、浄化された上に、力を与えられる感じ」
「古代ギリシャ料理にも通じるものがあります」
やはりサラも満足気になっている。
春麗は、腕を組んで考えている。
「どうもね、あの神前の祭壇の作り方とか、料理の手法とか」
「わが中国の神仙思想に、何か関係がありそうな気がする」
「それに、中国の道教と日本の陰陽道って、よく似ているし」
春麗は、神前での食事を終えて、極東アジアの宗教史にまで考えを及ばせ始めた。
さて、外国人巫女たちが、真面目なことを考えるなか、光はどうも表情がすぐれない。
そして、ブツブツと言い始めた。
「豊受大御神様のお食事メニューってのもわかるけどさ・・・」
「何か、食べた気がしない」
そのブツブツが気になった由香利が、光に声をかけた。
「あのさ、光君、それは失礼極まりない」
「その意味、わかっているよね」
由香利は、マジで怒っている。
光は、それでうろたえた。
「え・・・あ・・・そういう意味じゃなくて・・・」
と応えるけれど、実はほとんど、「そういう意味」である。
そして、光は由香利に、素直に「ごめんなさい」と頭を下げながら、
「でもさ、確かに、失礼とは思うけれど」
と由香利の顔をじっと見る。
由香利は、そこで顔を赤くするけれど、光の言わんとすることが全く読めない。
そこに、さっきから光と腕を組んでいる華奈が割って入った。
そして光と由香利の顔を見比べながら、解説する。
「つまりね、光さんとしてはね、確かに神聖な食事かもしれないけれど、神聖過ぎて食べた気がしないってこと」
「ありがたいけれど、ちょっと、違和感ってことだよね」
光は、華奈に頷き、由香利の顔をまた見て真顔。
「僕は、由香利さんのお弁当のほうが美味しかった」
その光の言葉は、由香利にとって、とんでもなくうれしい言葉だった。
「へえ?マジ?光君!やったー!最高!」
満面の笑顔、そして顔を真っ赤にして、華奈を光の腕から引きはがし、自分が光の腕を組んでしまった。
この状態に華奈はまた涙顔。
華奈の母、美紀は「華奈もウカツだ、豊受大御神様も大笑い」と、自分も大笑い。
ただ、このバトルには「どうでもいい、一時的なものだから、ほぼ無関係」の巫女はいろいろ考えている。
春奈
「光君は、案外お弁当が好きなのかもしれない」
ソフィー
「春奈さんが、光君と住むまでは、コンビニ食生活だったんだから、サンドイッチ以外にも、コンビニ弁当を食べたのかもしれない」
由紀
「私は、実は、お弁当が好きです、のり弁とか鮭弁当とか」
ルシェール
「そうなんです!私も日本のお弁当って大好きなんです!」
その話にキャサリン、サラ、春麗も興味深そうに寄って来ている。