お伊勢参り(8)外宮正殿前、由香利の秘法
光と巫女たちは、由香利と美紀の案内で、伊勢神宮外宮の御垣内に入った。
そして御正殿の前に立った。
光は、ただじっと見ているだけになっているけれど、巫女たちは様々。
春奈は、感極まった様子。
「とにかく清新にして、厳か・・・ずっしりとした歴史の重み」
ソフィーも、かなり真顔。
「うん、このゾクゾク感はすごい、さすが聖地」
由紀は、うれしそうな顔。
「日本古来の力ですね、大らかにして、すごく安心できる」
ルシェールも感激気味。
「とにかく、すごいパワーを感じます、大自然そのもののパワーというか・・・」
キャサリンは、ますます背筋が伸びた。
「モヤモヤが、この御垣内に入った時点で、全て無くなって、御正殿を前にした時から、身体がすごく熱くなって・・・」
サラは、涙を流している。
「私は、もう、この中に入った時点で、うれしくてしかたがないんです」
「ギリシャの故郷の風景とは別世界だけど、懐かしくて仕方がない、大きな力で包まれている感じ、何故かはわかりませんけれど・・・はぁ・・・幸せ」
いつもニコニコ顔の春麗も、かなり真面目な顔。
「これこそ、ピュアっていうのかな、真実というか、その重みがすごく気持ちがいい」
さて、黙っていた光は、御正殿の前に立つ、由香利、美紀、華奈の変化に注目している。
「あの三人、さすが伊勢大神様の巫女だね」
「特に御正殿の前から、身体全体のオーラがすごい」
そのオーラは、他の巫女も感じていた様子、全員が目を細めていると、由香利が光の前に歩いて来た。
その由香利はにっこりと、光に声をかけた。
「ねえ、光君、目を閉じてくれる?」
光は、
「え?うん」
と目を閉じると、由香利は光に向かって不思議な呪文を唱えだす。
また、由香利の呪文に合わせて、美紀と華奈の声も聞こえてきた。
どうやら、三人の巫女で、呪文を唱えているらしい。
そして、その呪文は意外と、すぐに終わった。
由香利の声が、また光の耳に飛び込んできた。
「はい、光君、準備できたよ、目を開けて」
光は、「え?準備って何?」と、首を傾げながら、目を開けた。
そして、腰が抜けるほど、驚いた。
「え?何?これ・・・」
まずは、光の服装が変わっている。
それもまるで、古代の服装になっている。
驚く光に、由香利から説明があった。
「冠の縁と袍の縁は萠黄の錦にしたよ」
「袍は有襴、長紐は白絹、下襲は白、褶は黄、表袴は萠黄綾、裏の紅で縁どりました」
ただ、光としては、そんなことを言われても、さっぱりわからない。
また首を傾げて、他の巫女たちの様子を見ると、これにも驚いた。
「え・・・どうしたの?みんなマジ?」
何しろ、全員が、白衣に緋袴、つまり巫女の正装に変化しているのである。