伊勢参り(1)
光と巫女たちが、伊勢神宮を参拝してから奈良に向かう日になった。
当初は、光が新幹線でと主張したけれど、ソフィーが「警備の都合上」と超強力に反対。
結局、由紀の叔父が運転するサロンバスに乗っての出発となった。
さて、そのサロンバスはかなり最新式かつゴージャスなものらしい。
華奈は乗り込むなり、大声三連発となった。
「わーーー!おっしゃれーー!シャンデリア?」
「フカフカクッションも紺でシック!」
「大きな冷蔵庫、スクリーン、トイレもある!私の部屋より豪華!」
華奈の母美紀は、呆れた。
「そんなこと言う前に、お人形だらけのベッドを整理しなさい」
「ほんと、高校二年になっても、まだまだ子供で・・・」
光は、それでも、伊勢参りと奈良行きのことを考えている。
「うーん・・・伊勢に行って奈良かあ・・・」
「お土産買っていかないと、楓ちゃん、かなりムクレルなあ」
春奈は、その楓に反応した。
「とにかく、あの赤福がいいと思うんだけどねえ・・・でもねえ・・・」
ソフィーも、春奈の心をすぐに読んだ。
「うん、その懸念わかる、炭水化物系の甘いものは、楓ちゃんには危険だよね」
ルシェールも不安顔になった。
「でもねえ、楓ちゃんは、そういうのが大好きなんです、伊勢のうどんもあるけれどねえ・・・」
そんな巫女たちの不安を、伊勢大神の巫女由香利が読んだ。
少し難しい顔をしながら
「ういろうって知っています?あれならカロリーが低いけれど」
ただ、そこまで言っても、顔は難しい顔。
光が由香利に反応した。
「由香利さん、難しいと思う、楓ちゃんの頭と胃袋は、絶対赤福になっているはず、甘味がしっかりないと・・・」
つまり、楓へのお土産は、赤福しかないと言うのである。
結局、楓の同い年の従妹である光の言葉が決定的だった。
楓へのお土産は赤福となった。
春奈は、途端に普通の顔にもどった。
「いいや、私の体型が変化するわけじゃなし」
ソフィーもそんなものになった。
「食べ過ぎて、体重計乗れなくなっても、それは楓ちゃんの自己責任だしさ」
ルシェールは、フフンと笑った。
「そうですねえ、いつも思いっきり文句を言われるから、もうドンと持って行きましょう、あとは楓ちゃんしだいです」
ただ、華奈は反応しなかった。
「私は、聞かなかった、気がつかなかったことにする、後で楓ちゃんの爆発が怖いし・・・」
楓の事情に詳しくない、キャサリン、サラ、春麗は、面白そうに聞いているだけ。
そして、言い出した当の光は、話の途中で、すでに眠っている。