お伊勢参りの計画、美紀は名ハーモニスト?
光は、目を輝かせながら、少し考えた。
「うん、由香利さんの言う通りだね、伊勢の大神様の御力があると、すごく心強い」
そこまで言って、華奈も見る。
「由香利さんと華奈ちゃん、お世話をかけるけれど、手配を頼みます」
その決断もはやく、手配まで由香利と華奈に頼んでいる。
由香利は、素直に光に頭を下げた。
「伊勢様と春日様の御力が、今回は重要なものになると思うので」
華奈の母、美紀も、由香利の言葉に反応した。
「そうだね、今日のアメリカ大使館で御力を振るっていただいた建御雷神様も春日様の関係」
「伊勢様は、清浄の鏡の御力と、心の御柱の御力かな」
由香利も、深く美紀の言葉に頷いている。
ただ、美紀の言葉は、華奈にはよくわからないらしい。
「母さん、意味不明、由香利さんと二人だけでわかりあっているの?」
「私だって、光さんにお願いされているんだから、私にもわかるように言ってよ、全く気に入らない」
その華奈の言葉に、母美紀は呆れ顔で由香利に頭を下げ、由香利は苦笑状態。
それでも、光が華奈に声をかけた。
「華奈ちゃん、大丈夫、神前に出ればわかるよ」
「それで、その時には、僕の両隣に、由香利さんと華奈ちゃんが並んでもらうから、それは約束する」
「おそらく、その時に何かがある」
すると、華奈は途端に表情が一変。
「そうかあ・・・やはりねえ・・・」
「光さんの隣には、私か・・・うんうん・・・」
「由香利さんは、まあ、仕方がない、大先輩巫女だから」
「それで、私は、まだ新米だけど、瑞々しい巫女だ」
「・・・そうなると・・・うんうん・・・」
まるで、華奈自身以外には理解できない言葉をつぶやき続けるけれど、やはり、他の巫女は、何も聞いていない。
少しキョトンとして光と巫女たちの会話を聞いていた小沢が口を開いた。
「そうか、伊勢と奈良に行くの?」
「どちらも、日本の古き聖地だね」
ただ、小沢自身は行くことはないので、あまり関心もない。
次に出た言葉は、
「さあ、食後なので、音楽をして遊ぼう」
だった。
それには光もニッコリ。
「ピアノを弾きます、先生はヴァイオリンですね」
小沢も、光の早速の反応がうれしいようだ。
「そうだね、由香利さん、由紀さん、ルシェール、ソフィーはコーラスにして」
「華奈ちゃんは僕と一緒にヴァイオリン、キャサリンはトランペット、サラはチェロ、春麗はフルートとなると・・・ジャズかなあ」
小沢がそこまで言った時に、華奈の母美紀が、フフッと笑い、ポケットから光る物を取り出した。
そして美紀は小沢の顔を見る。
「先生、私もたまには・・・・」
小沢より早く、光が反応した。
「わ!美紀叔母さん!あの伝説のハーモニカ?」
小沢が、光の言葉を補足する。
「うん、マジで美紀さんのハーモニカはすごい名人、トゥーツ・シールマンスってハーモニカの超名人がいるけれど、彼の曲を難なく吹きこなしちゃうんだ」
「ほんと、宗教学者にしておくのが、もったいないほど」
他にも、美紀のハーモニカを理解しているのは娘の華奈だった。
華奈は、思った。
「せっかく主役の座を、つかみかけたのに・・・あのハーモニカか・・・
またしても、主役の座が・・・」
少し落胆した華奈に、光がささやいた。
「華奈ちゃん、何も心配はいらない、華奈ちゃんの気持ちは、しっかりわかっている」
その言葉で、華奈は、完全に赤面状態になってしまった。