パエリャの会とそれぞれ、由香利の提案
巫女たちの少々の攻防戦はあったものの、小沢先生が参加したパエリャの会は、豪勢なものとなった。
まずは、光の食欲が旺盛。
「サフランライスも、上に載っている魚介類も、味が濃くて、でもさわやかな感じで、食べるごとに身体が元気になる感じ」
小沢もそんな光の食欲に目を見張る。
「最後に、レモンをサーーッと絞ってかけたのさ、香りも立つ」
春奈も、かなり多めに取っている。
「お米にレモンなんて、和食では考えられないけれど、これは鮮烈、光君にはいいかも、シャキッとするはず」
ソフィーはローストビーフにもご執心。
「味がしっかり沁みていて、柔らかいし、さすが美紀さんです」
華奈が少し口を尖らすけれど、美紀はそんな華奈など何も見ない。
美紀
「いえいえ、これだって、光君のお母さんの得意料理」
「塩、胡椒の量も、焼く時間も、ソースも全てそのレシピ」
ルシェールは、ローストビーフのソースに注目している。
「バルサミコのソースと、和風ワサビソース・・・どっちも美味しい」
「ほんと、光君のお母さんの料理の技術ってはかり知れない」
由香利は、いろいろと考えている。
「光君は、実は子供の頃は、こんな美味しい料理を食べていたんだ」
「でも、お母さんが、あんな風に亡くなってしまって」
「その後は、お父さんも忙しいから、コンビニ食生活」
「高校一年生の頃なんて、いつも真っ青な顔で、華奢で・・・」
由紀も、由香利の顔を見て
「それが、由香利さんのお弁当を食べると、途端に食欲が出るんです」
「去年の夏、ボクシング部に絡まれて以来、クラスの女の子が心配になって、みんなで光君にお弁当を交替で作ったんです」
「でも、由香利さんのお弁当だけは、別格でした」
「おそらく、由香利さんの味付けと、光君のお母さんの味付けと近いんだと思うんです」
キャサリンもパエリャとローストビーフには評価が高い。
「とにかく少しレシピを見せていただきましたが、細かな技術がすごくて、かなり勉強になります」
いつものキチンとした真顔で、食べている。
サラも同じく。
「パエリャが日本でこれほど美味しく食べられるなんて、思ってもいませんでした、故郷が懐かしくなります」
少し目を潤ませている。
春麗も、食欲旺盛。
「中華の味付けではないけれど、こういうのも好き。ここの家にいると世界中の美食が味わえそう」
そう思って、チラリと華奈を見ると、その華奈の顔が少し浮かない。
華奈は、食べていることは食べているけれど、しきりにブツブツ。
「なかなか、この域まで私がたどり着くのは難しいなあ」
「そうなると、誰かに、しっかり教わったほうがいいかもしれない」
「意地悪母さんはすぐに怒るし、春奈さんも、フフンといって上から目線」
「ソフィーはビシバシ厳しそう」
「由紀さんには、私の些細なミスを知られるのが、恥ずかしい、学園内で話題にされると辛い」
ただ、華奈の「料理技術指南に係る先生の選択」は、中途半端で終わってしまった。
次に考えようとした由香利が、光に突然、声をかけたのである。
由香利は真顔。
「ねえ、光君、奈良に行く前に、伊勢神宮に寄れないかな」
そして、その目がかなり輝いている。
光は
「うん・・・」
由香利と同じように、その目を輝かせている。