華奈の必死と巫女たち
音楽部での「運命」練習終了後、小沢が光と春奈、ソフィーを手招きをした。
小沢は、ニコニコとしてまずは光に
「また、光君の家にお邪魔したいと思うけれど、突然過ぎるかな、あれがしたくてさ、ずっとね」
光は、小沢の意図がすぐにわかったようだ。
光もにっこりとして
「先生、もしかして、あのパエリャですか?」
小沢も、素直に頷いたので、かつて光の家で食べたパエリャということになる。
春奈もうれしそうな顔。
「あらーーー・・・あのパエリャ本当に美味しかったです、それをまたなんて」
ソフィーも、途端に食欲がわいて来た様子。
「そうなると、魚介類ですよね、ニケに・・・」
つまり鎌倉の母ニケに連絡をしようとするけれど、小沢がそれを押しとどめた。
小沢は含み笑い。
「ああ、それは不要、もうニケさんね、由香利さんとルシェールと一緒に築地で買い出ししている」
「サフランも必要だから」
・・・などと話をしていると、華奈が必死かつ真っ赤な顔で光の前に来た。
そして華奈は光に
「ねえ、光さん!早く帰ろう!」
「もう、私の母さんが、大変なことになっていてさ、早く早く!」
しかし、話の内容が、その程度なので、意味がサッパリ不明。
光が首を傾げていると、廊下で「運命」の練習を聴いていた由紀が、光の前にきた。
由紀は華奈をチラッと見て
「あのね、華奈ちゃんのお母さんの美紀さんも、光君の家のパエリャの会に参加するって、メールが私に来たの」
「それでね、他にも作るものがあるので、どんどん帰ってきてって、確かローストビーフとコンソメスープ、サラダも作るらしい、あと他にもあるのかな」
春奈は、少し首を傾げていたけれど、ようやく理解した。
「そうか、華奈ちゃんだと、早とちりで状況をしっかり説明できないから、冷静な由紀ちゃんにもメールしたんだ」
「ほんと、高校二年生にもなって、マダマダだなあ、華奈ちゃんも」
そう思って華奈の顔をフフンと見るのだけれど、華奈はそういう春奈の「フフン」だけには反応が早い。
華奈は、腕を組み、春奈に反撃を開始する。
「春奈さん!そんなフフンなんて言っている場合じゃありません!」
「とにかく!早く帰ることが何よりも大事」
「細かな説明など、車中で十分!」
「だいたいね、ローストビーフが失敗したらどうするんですか!」
とまで言って、光の顔をニンマリと見る。
「ねえ、光さんだって、そう思いますよね」
「私と、私のお手伝いの母美紀の愛情のこもった美味しいローストビーフ食べたいですよね」
華奈は、そこで少し間を置く。
そして光が、返事に戸惑ったのをいいことに、一気に光と腕を組んでしまった。
ソフィーは、また呆れた。
「結局、これがしたかったんだ・・・華奈ちゃんのお手伝いの美紀さんなんて、美紀さんが聞いたら、華奈ちゃん張り倒されるって・・・」
春奈は、どうでもいい感じ。
「張り倒されて大泣きになるのも面倒、でも、華奈ちゃんのアピールなんて、どうせ、一時的なもの、みんなそう思っている」
由紀も、そんな感じ。
「どうして華奈ちゃんって、時々、突発的な動きをするのかなあ、でも、それが突発的だけで、続かないんだよね」
また、他の候補者巫女のキャサリン、サラ、春麗も、全く気にしない。
キャサリン
「光君、運命を指揮して疲れ気味だから、歩行支え係でいいかな」
サラ
「どうせ、スキを見せるから、奪い取ればいいさ」
春麗
「奪い取るのはいつでもできる、華奈ちゃんってスキだらけ」
小沢も、巫女たちの反応には、今さらながら頭を抱えている。