表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
143/371

光のプロデビュー?

その小沢の頼みは、光にとって、「本当に驚くべき話」だった。


小沢が真顔になって話はじめたのは、光の音楽家としてのプロデビューについてだった。


「すでに進学も内定、というかスカウトに近い」

「だから、その意味では、全く光君には心配はいらない」

「多少の語学の勉強は必要だけれど、いざとなったらルシェール君がいるから不安がない」

「光君の演奏を聴きたいという音楽関係者が、かなり多いんだ」

「一日も早く、プロになったほうがいい」

「それで、僕が振るオーケストラで、コンチェルトを弾いてもらってもいいし」

「それ以外には同じコンサートで指揮をしてもらってもいい」

「バッハのような室内楽で、ピアノあるいはチェンバロ兼指揮者でもいい」


光が、あっけに取られていると、小沢はどんどん畳みかけてくる。


「若手のピアノコンクールに出てもらってもいい」

「君なら、全く技術的に不安はないし」

「日本を皮切りに、海外のコンクールに挑戦しても、面白い」


光の隣で、小沢の話を聞いている校長は、面白そうな顔。

「そうですねえ、どれも、光君の音楽家としての将来に有益ですね」

「あとは、光君次第ですね」


ただ、そこまで言われても、なかなか結論を出せないのが、優柔不断の光らしい。


「小沢先生も、校長先生も、そう言っていただくのは、本当にうれしいのですが・・・まずは学園内のコンサートの練習もありますし」

「それに、そんなにたくさん言われても、どれから手をつけていいのか、わかりませんし」

「はぁ・・・体力持つかなあ・・・」

最後は、自分の体力不安まで口にする。


しかし、小沢は、そんな光の「優柔不断」にはつきあわない。

またしても、どんどん畳みかけてくる。

「そうだなあ、まずは僕とのジョイントコンサートにしよう」

「一曲目は、光君が振りたい曲」

「二曲目は、光君が弾きたいピアノコンチェルト」

「三曲目は、僕が振る」

「名目としては、注目の若手発掘コンサート」

「大学が後援するスタイルかな」


小沢は、そこで、少し間をおいて光の顔をじっと見る。


光も、そこまで言われて、断りづらくなってきたようだ。

しきりにブツブツとつぶやいている。

「うーん・・・小沢先生と一緒ならいいかなあ」

「小さな頃からの知りあいの先生だし」

「父さんも・・・母さんも・・・一緒にいた時に、よく来てくれたし」


少しずつ、光の目が輝きだした。

そしてまたブツブツ。

「ベートーヴェンは学園で演奏するしなあ・・・」

「ブラームス・・・うーん・・・その雰囲気じゃない、好きだけど」

「シューマン、ショパン・・・ラヴェル・・・うーん・・・」

「バッハは、大編成のオーケストラでは変」

「となると・・・」

そこまでブツブツ言って、ようやく光は、その顔を上に向けた。


そして、小沢の顔を真っ直ぐに見た。

小沢も真顔、校長も光の次の言葉をじっと待つ。


光にしては、はっきりとした声。


「わかりました、せっかくですので、取り組んでみたいと思います」

「作曲家としてはモーツァルト」

「序曲はフィガロ、コンチェルトは21番」


小沢は、にっこりと光の手を握る。

校長は、まずはホッとした。

そして、ワクワクとした顔になっている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ