平穏な登校、由香利のお弁当談義など
さて、トラブルが発生した前日とは異なり、今日の登校は実にスンナリとしたものになった。
光の周囲を由紀、キャサリン、サラ、春麗が固めているのは同じであるけれど、少々はじき出された感のある、由香利、ルシェール、ソフィー、春奈は平静を保ち、華奈でさえ、全く文句を言わない。
そして話題になっているのも、平穏なもの。
何しろ、由香利がメインとなったお弁当の話である。
春奈は、ワクワクした感じ。
「由香利さんが作っているのを見ているだけで、お腹減っちゃった」
ルシェールもうれしそう。
「さすが築地育ちですねえ、さわらの菜種焼き弁当なんて、お昼が楽しみになります」
華奈はニコニコとしている。
「のり弁にしたご飯も、美味しいよね、海苔も築地の上物だし、ご飯の上におかか醤油も美味しい、ご飯も当然」
ソフィーも、うれしくて仕方がないようだ。
「さわらの菜種焼きって、さわらの照り焼きに炒り卵を乗せるんだけど、さわらも軽めで美味しいし、玉子も新しくてコクがあるし」
由香利も朝ごはんから始まった好評が、うれしいようだ。
「はい、築地育ちなので、和食はお任せ願います」
「ただ、関東風の味付けになります」
キャサリンも口を開いた。
「こういうお弁当の文化は、イギリスにはあまりないので、面白いです」
「それとグリーンアスパラの青のりあえも、美味しそうで」
サラも興味津々な様子。
「グリーンアスパラとネギ、生姜ですね、それをさっと炒めて青のりをまぶす」
「見た目でも食欲がわいてきます」
春麗は、光の顔をじっと見た。
「光君の好きそうな素材と味付けだね、やはり関東育ちだね」
「光君、すごく自然な顔をしているもの」
そこまで言われて、光もようやく口を開いた。
「そうだね、みんなのいろんな料理が全て美味しいのは事実」
「春奈さんも奈良の落ち着く味、ルシェールは美味の最高みたいだしやさしい感じ、由紀さんも相模の豊かな味を感じるし、ソフィーはニケの影響かな、海産系は絶品」
「もちろん、キャサリンのカリフォルニアスタイル、春麗の四川も好き」
そこまで話して、光は由香利の顔を見る。
「由香利さんの味付けってね、母さんの味付けと、同じなんだ」
「だから、すごく食べやすいの、安心して食べられる」
「毎日でも飽きない、育ってきた味だからね」
「これはいい悪いの話ではなくてさ」
由香利は、うれしそうな顔。
それでも、昔を思い出したらしい。
「去年の夏前までは、というか春奈さんが光君の家に来てくれて面倒を見てくれる前までは、コンビニ食生活だったんでしょ?」
「ほんと、いつ見ても、やせていて華奢だし」
由紀も思い出した。
「夏の体育の授業なんて、校庭に出て5分持たない、そのまま春奈さんの保健室に直行だもの、心配で仕方がなかった」
「お昼だって、毎日、フルーツクリームサンドを時間かかってモタモタと食べているし」
華奈も光の顔を見て、いろいろ考える。
「私も、いつかは光さんのお弁当とか、お食事を作れるようになりたい」
「時々は役に立っているかもしれないけれど、もっと安定して光さんを支えられるようになりたい」
そして、全員の巫女を見て、気を引き締めた。
「とにかく、今は力不足かもしれない、でも、私は絶対に光さんを諦めない」
「私は、絶対に光さんのお嫁さんになる」
華奈の決心は、どんな状態でも、揺らぐことはない。