華奈の作戦?しかし・・・
キャサリン、サラ、春麗のクラス内での紹介も終わり、始業式当日の学園内での行事は、終了となった。
光としては、「家に帰る」以外には、何も考えていないけれど、やはりそんな簡単には、話が進まない。
担任が「じゃあ、また明日」
と言って、教室を出た瞬間、華奈が飛び込んできたのである。
そして、華奈はさっそく大騒ぎをはじめた。
「ねえ!光さん!まっさか、このまま帰るなんて怠け心を出してはいませんよね!」
「いいですか?光さんは音楽部の三年生になったんです」
「そろそろ、夏のコンサートの演目も決めなくてはいけないんです」
「わかってます?光さん、指揮者なんですよ?」
・・・・
とにかく大騒ぎをしているけれど、華奈の言いたいことを要約すれば、
「光はまっすぐに帰宅してはいけない」
「音楽部の三年生、しかも指揮者として、夏の演奏会の曲目を決めなくてはいけない」
「だから、音楽部にいかなければならない」
ということになる。
ただ、華奈の「本当の下心」は、音楽部に「光を連れ去る」「光を独占」である。
そして都合よく、合唱部の由紀は、まずジョイントコンサートでもしない限り、この音楽部行きに関係することはない。
今日からの転入生の、キャサリン、サラ、春麗にいたっては、音楽部に「光を連れ去る」「光を独占」することにより、校長室でコテンパンにやられてしまった「仕返し」もできる。
華奈にとっては、「完璧」な作戦だった。
華奈も言い終えて、目一杯の笑顔で光に微笑むことが出来た。
しかし、その華奈の「完璧な」作戦は、あっさりと破綻した。
何しろ、「連れ去り独占対象の光」が、まず予想外のことを言い始めた。
「そうだねえ、曲を決めるんでしょ?」
「いいよ、音楽部のみんなが演りたい曲で、何でも振るから」
やはり、ナマケものの光は、「面倒くさい」という気持が先に立つ。
何より、「早く家に帰ってベッドにゴロン」の意思が強いようだ。
華奈は、光のそんな言葉を聞いて、本当に焦り、そして怒った。
「だめです!光さん!そんないい加減なことは許しません!」
そして怒ってしまえば、もうタメライも何もない。
いきなり腕を伸ばして、光の腕を組もうとする。
そんな華奈と光の様子を「呆れ顔」で見ていた由紀が、ようやく声をかけた。
「ねえ、光君、私も合唱部の部長なの」
「それでさ、夏のコンサートにさ、合唱部とジョイントしてくれない?」
「光君がいいって言ってくれたら、私も音楽部の話し合いに加わるし、他の合唱部のみんなにも声をかけるんだけど・・・どう?」
すると光の答えは、超簡単。
「へえ、由紀さん、面白いねえ、それじゃあ話し合いに行くかなあ」
超簡単に承諾して、おまけにニコニコと笑っている。
華奈は、またしても焦った。
華奈が必死に説得して腕まで強引に組もうとした途端に、光は由紀の言葉で「アッサリ」と考えを変えてしまっている。
「・・・情けない・・・私って何?」
華奈は、涙目になりかけてしまった。
そんな落ち込み状態の華奈の肩を、突然、春麗がポンと叩いた。
「え?」と言う顔で、華奈が春麗を見ると
春麗
「華奈ちゃん、あのね、私たちも話し合いに参加するから、みんなで行こう」
キャサリンは由紀にも声をかけた。
「由紀さん、これには理由があるの、実はかなり深い、そうでなければいけない理由がある」
最後にサラが、光の顔を見た。
「大丈夫、心配はありません、みんな音楽の名手です、光君、ご存知では?」
不思議なことに、光はその言葉を聞いた途端に笑顔で、歩きだしている。