光と春奈の仲直りに嫉妬する巫女たち
天使長ミカエルは、光の表情の変化を確認した。
そして、その「対策」も把握したようだ。
再び、天井から不思議な声が降ってきた。
「わかりました、阿修羅様、それは妙案と思います」
「それでは、そのための準備をさせていただきます」
光が、それに頷くと、即座にその姿が消えている。
ただ、その意思疎通は、光つまり阿修羅と天使長ミカエルだけのことらしい。
他の巫女たちには、ほとんど読めなかったのである。
そのため、光は結局、巫女たちから追求を受けることになる。
まず、ソフィーが追求のトップバッター。
「ねえ、光君、具体的にはどうするの?どうして読めないのかもわからない」
ルシェールも、不思議そうな顔。
「私も、光君の考えが全く読めない、隠し事はいけません」
由香利は、ムッとしている。
「とにかく全然違う系統の力だね。天使長ミカエルとのさっきの会話そのものが日本語じゃない」
由紀は、首を傾げた。
「どこか中東のような言葉だった」
華奈は、少々ピンと来たことがあるらしい。
「アラム語・・・いつか阿修羅が使っていたような気がする」
キャサリンは、全然不明だった。
「そこの勉強まではしていません、残念です」
サラは、ほんの少し程度は読めたらしい。
「華奈ちゃんの言う通り、確かにアラム語、それも古アラム語、私の生地の古い言葉だけど、古すぎて誰も知らない」
春麗は、最初から諦めていた。
「全く無理、聞いても仕方がない」
そんな首を傾げる巫女たちを見て、ずっと黙っていた春奈が口を開いた。
とにかく、ニコニコ顔になっている。
「えへへ、私、わかった」
「あのね、簡単に言うと、仮想現実社会を作るの」
「それも、とんでもないような世界をね」
そこまで言って、光の顔を見る。
「ねえ、光君、作ると言っても、かなり先だよね」
光は、素直に頷く。
「まだまだ先、相手が出てこないと、上手に誘い込めない」
「とりあえずミカエルの次の報告待ちになる」
ソフィーが口を開いた。
「何となくわかった、でも、少し気に入らないことが、まだある」
光がキョトンとすると、ソフィーは言葉を続ける。
「まずは、春奈さんとの仲直りが、どうしてそんなに簡単なの?」
「春奈さんはニヤけているしさ」
「私でさえ読めない情報を、先に取るしさ、全く気に入らない」
そのソフィーの言葉には、他の巫女も同感らしい。
全員が同時に頷いている。
春奈は、それでも全く引かない。
「いいじゃない、光君と手をつないでいたら、わかっちゃったんだもの」
「光君の手って、温かいしさ」
「握っていて気持ちがいいしさ」
「みんな何?それってヤキモチ?」
ついさっきまで、「若手巫女へのヤキモチ」が充満して、光に文句ばかりを言っていた春奈とは、思えないような口ぶりになっている。
華奈がポツリ。
「それはね、春奈さんが、過去世で何度も妻だってのはわかるよ、でもさ、そうやって独り占めし過ぎなの」
その華奈の言葉にも、他の巫女は同感のようだ。
また、全員が同時に頷いている。
ただ、光は、また別のことを考えている。
そして、その次の出てきた言葉は、全ての巫女にとって「あっけに取られる」言葉であった。