ベリアルのリスクと光(阿修羅)
天使長ミカエルの報告は、まだあるようだ。
「蠅と蚊については、現在はその程度です」
「もう少しわかったことがあるのです」
「彼の策動が感じられます、昨日の元官僚の表情から見て取れました」
その言葉の後、ミカエルは何故か、ソフィーの顔を見た。
ソフィーは、じっとミカエルの顔を見る。
そして何か気がついた様子。
慎重な声で
「ねえ、もしかして、ベリアルなの?」
と、問いただす。
ルシェールが、その「ベリアル」に反応した。
「え・・・あの?これ、やばい・・・」
「蠅と蚊だけでも、大騒動になるのに」
「ベリアル・・・」
ルシェールの身体が震えてきている。
光が口を開いた。
「また、面倒な輩だ」
そしてミカエルの顔を見た。
「まずは、ベリアルについて説明してくれないか、日本人巫女と中国人巫女の春麗にもわかるように」
天使長ミカエルは、光の依頼により、説明を始めた。
「はい、ベリアルについて説明をさせていただきます」
「立ち位置としては、堕天使になります」
「人間を裏切りと、無謀と嘘に導く者」
「多くの天使を神への反逆に誘い込み、堕天させた張本人」
「淫靡にして、悪徳を好む者」
「堕天使軍団を率いる地獄の君主の一人となります」
ミカエルの説明が続く。
「炎の戦車に乗った美しい天使なのですが、優雅にして口も達者」
「しかし、あらゆる人を欺く、裏切ることを楽しみとする者」
「報酬は先に生贄を要求し、約束は守らない」
「旧約の創世記にも記述があります」
「そう、ソドムとゴモラの話です」
「街に乱れた性や悪徳を蔓延させ、その結果、神の怒りに触れて、硫黄と炎で、ソドムとゴモラの町は壊滅してしまった」
震えていたルシェールが口を開いた。
「でも、そのベリアルでも、魔法王のソロモン王には負けたのでは?」
「ベリアルと、彼の全軍団52万2280の悪魔が、一つのビンに閉じ込められたのでは?」
ミカエルは、ルシェールの質問に、また難しい顔。
「いや・・・その瓶の話は、真実はわかりません」
「とにかく、欺くことに関しては、彼の独壇場なのです」
他の巫女たちは、一様に難しい顔になっている。
由香利
「蠅と蚊のリスク満点な悪神に、裏切と欺きの地獄の王、聞いただけで疲れる」
由紀
「衛生対策とか防疫対策って言っても、なかなか徹底されないし」
華奈
「うーん・・・これから暑くなるのに、素肌は難しいかな」
キャサリン
「ゲリラ戦ですね、どこに相手が潜んでいるかわからない」
サラ
「よほど、体力と精神が安定していないと、混乱と混沌に巻き込まれます」
春麗
「確かに対策を立てるのが、難しい」
光は、ずっと考えている。
「ソドムとゴモラは、全て焼き尽くして解決したけれど、それも残酷」
「現代では、かなり困難」
「そうなると・・・うん・・・」
「逆におびき寄せるか・・・そこで・・・あの技を逆にしかける」
光の目が輝いた。
何か、対策が浮かんだような、表情になっている。