光の読み、天使の出現
赤坂の大聖堂は、かつて光(阿修羅)と金剛力士二体が、ミノタウロスの大群とドラキュラと戦った因縁の地。
また、ドラキュラとのし烈な戦闘の後、光が瀕死の状態になり、ルシェールが聖母マリアとイエスから授かった「愛の妙薬」を、口移しで飲ませて、光を回復させた場所でもある。
その時の激戦を思い出す巫女たちは、複雑な思い。
また、キャサリン、サラ、春麗もその情報は把握しているらしい、興味深そうな顔で、大聖堂の前に立った。
マルコ神父が全員に声をかけた。
「光君、そして巫女様方、ようこそお越しいただきました」
「すでに大聖堂内では準備ができております」
とまで言って、ルシェールを呼び寄せ、何か打ち合わせ、それもすぐに終わった。
マルコ神父は、言葉を続けた。
「さあ、さっそく大聖堂の中に」
その言葉で、光と巫女たちは、歩き出す。
ただ、光は、まだお腹をおさえたまま、苦しそうな顔をしている。
ルシェールが光の前を歩き、いつもの通り由紀、キャサリン・サラ・春麗が警護をする。
春奈、由香利、華奈はその後。
ソフィーが一番最後を歩く。
春奈がソフィーに声をかける。
「一番最後を歩くのは、全体の警護のため?」
ソフィーの答えも、即座。
「その通り、私たちの警護は日本政府の責任でもある」
「大聖堂の結界とは言え、どんな悪霊が見張っているかはかり知れない」
ソフィーの言う通り、いつの間にか、警察車両だろうか、数台の車が大聖堂を囲んでいる。
全員が入った時点で、大聖堂の扉が閉じられた。
ずっと黙っていた光が、ルシェールに声をかけた。
「ねえ、ルシェール、ミカエルの特別の報告があるっていうのは昨日のことなの?」
ルシェールは、頷いた。
「うん、そうだよ、光君、それと蠅の神の報告」
マルコ神父からも光に声がかかった。
「光君、とにかく面倒な神です、しつこく毒と混乱をまき散らす」
「蠅の羽からは毒、羽音からは混乱」
「しかも、あちこちに巣を作り、繁殖力は強く大量発生なのです」
光は、ますます苦しそうな顔に変わった。
「そうだねえ、そうなる」
「でも、ミカエルのおっさんが、特別報告って言うんだから、それだけではないのでは?」
ルシェールは、その言葉にハッとした顔。
「うん、光君、蠅の次には・・・」
と言いかけた時だった。
大聖堂の電気照明が全て消えた。
一瞬、大聖堂の中は、真っ暗。
しかし、次の瞬間、眩いばかりの光が、大聖堂の天井に発生。
大聖堂内は、電気照明など比較にならないほどの、神々しいまでの明るさとなった。
そして天井から声が降ってきた。
「光君、いや阿修羅様」
「それから巫女様方、ようこそお出でくだされました」
光と巫女全員が天井を見上げると、背中に羽を生やした天使が確かに浮かんでいる。