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光と春奈の氷の固い壁

「光君!」

春奈は、走って光の前に立った。

しかし、その後の言葉が出ない。

本当は、光を抱きしめて、謝ろうと思ったけれど、さすがにここは学園内。

それに、春奈は保健室を受け持つ教師という立場もある。

すごく悔しいけれど、声も出ない。


光は、顔が青い。

そして、春奈を見ようとしない。

それでも

「先生、何か?」

弱々しい声で聞いてきた。


春奈は、ここでまた気落ち。

「それは・・・ここでは先生だけど」

「言い方が、冷たい、事務的」

それでも、他人の目もある。

月並みとは思ったけれど

「大丈夫、元気がないみたいだけど」

「どこか、痛いところとかあるの?」

保健室の教師としての質問くらいはしようと思った。


光は、首を横に振る。

「いえ、大丈夫です、歩くぐらいはできます」

「それでは、これから用事がありますので」

と、ここでも「事務的な」言い方。

結局、春奈の顔を見ることもない。


ルシェールが、光の前に立った。

「じゃあ、光君、車に乗って」

少しふらつく光と一緒に廊下を歩き出す。


そして、他の巫女も、ルシェールと光の後に続く。

春奈は、またここでも意気消沈。

「いつもだったら、少しは笑ってくれるのに」

「光君の心に、すっごい固くて冷たい壁を感じる」


華奈が、春奈の隣を歩きだす。

そして、真っ青な春奈に

「春奈さん、やばいよ、これ」

「春奈さんも落ち込んでいるけれど、光さんの心もグジャグジャだよ」

「私、あそこまで落ち込んでいる光さん、見たことない」

華奈も、心配そうな顔で、光と春奈を見比べる。


教会からの完全祈祷お迎えバスに乗った。

光は、ルシェールに腕を組まれ支えられている。

いつもは、ムッとする他の巫女たちも、何も言えない。


ソフィー

「華奈ちゃんの言う通りだ、心の中は血だらけで弱っている」

由紀も不安そう。

「言葉って、怖いなあ、あそこまで落ち込ませるんだ」

由香利も、反省している。

「私も、ついつい、強いこと言ってしまった」

「確かにソフィーと春奈さんと私が三連発で、光君を叱れば、落ち込むなあ」


キャサリンは深刻な顔になった。

「これだと、週末の奈良でも、光君が心配になる」

サラは、懸命に考えている。

「解決策は、光君と春奈さんの氷の壁と溶かすには・・・」

春麗は、ポツリ。

「とにかく、いつまでも、こんなことでは困る、光君と春奈さんだもの、心の奥ではつながっているはず、そのつながりを思い出させないと」



赤坂の大聖堂が、完全祈祷バスの車窓から見えている。。

入り口に立っているのは、マルコ神父。


じっと下を向いていた光がようやく顔をあげた。

しかし、まだ辛そうな顔をしている。

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