責められて落ち込む春奈
春奈は、すでに心が折れそうになった。
それでも、いろいろ考える。
「光君のケアをするべき私が、逆に傷をつけているの?」
「言い過ぎたかなあ、確かに」
「去年の夏は圭子と楓ちゃんから頼まれて、光君が本当に弱々しかったし」
「でも、光君、可愛かったし、今でも可愛いし・・・」
不安も芽生えてきた。
「光君に、もう、春奈さんはいらないって言われたらどうしよう・・・」
「光君の笑顔だけが楽しみで過ごしてきたのに」
「でもなあ、ソフィーもルシェールもキツイし、また責められそうだし」
また、こうも考える。
「巫女さんが多くなって、隣のアパートに住んで、食事もお風呂も一緒」
「光君を一人占めする時間も、激減した」
「なんか、寂しくなったのは事実」
「それと、安全パイだった華奈ちゃんまで、最近急成長している」
「私も、時々負けているしなあ」
「それで、ジェラシーを感じていたのは事実だ」
ソフィーが、考え込んでいる春奈に声をかけた。
「春奈さん、今のままでは、部屋を変わってもらうかな」
「つまり、春奈さんがアパートに住んでもらう」
「私か、ルシェールが、本宅に光君と一緒に住む」
ルシェールも頷いている。
「子供のころから、よく知っていて、奈良育ちで、光君より年上なのは、ソフィーと私だけ」
「ソフィーも呪力が強いし、私はご存知の通り」
「部屋も余っているし、いいかもしれない」
春奈は、また肩を落とす。
「・・・それって・・・追い出されるってこと?」
「ちょっと・・・やだ・・・」
「マジでいや・・・光君と一緒にいたい」
しかし、ソフィーとルシェールの表情は、変わらない。
春奈への返事もない。
さて、音楽部の練習も終わったようだ。
廊下を人が歩く音が大きくなった。
ソフィーとルシェールは、保健室を出た。
春奈も難しい顔で、二人に続く。
ソフィー
「ねえ、ルシェール、ミカエルの話も何も、光君の回復しだいだよ」
ルシェールは、音楽室の光を透視している。
「そうね、まだ、立ち上がれないみたい、顔が真っ青」
春奈は、ますます肩を落とす。
「私、そのまま家に帰るかなあ、光君に悪いことしちゃった」
ソフィーは、そんな春奈に、またダメだしをする。
「あのさ、春奈さん、もう少し考えて、春奈さんが一緒に行かなかったら、光君、またショックになるよ」
ルシェールも、ソフィーに続く。
「繊細な光君だもの、春奈さんの姿がないと、春奈さんがまた怒っていると思うに決まっている」
春奈は思った。
「うーーー・・・なんか針のムシロ・・・辛いなあ」
廊下の先にある音楽室のドアが開いた。
顔が真っ青の光がでてきた。
その足もふらついている。
華奈、由紀、キャサリン、サラ、春麗は、光が倒れないように見張っている状態。
春奈は、いきなり、走り出した。