春麗と華奈 圭子叔母の心配
「四川風エビの頭のスープ」
「牛肉の唐辛子汁煮」
「細切り豚肉の豆板醤炒め」
「角形骨付き豚バラ肉の直火焼き」
春麗のテキパキとした指導で、巫女たちが、キッチンの中を動き回る。
料理は苦手の部類の華奈も、少しずつ慣れてきた様子。
華奈は、動き回りながら思った。
「うん、とにかく辛そうだけど、美味しそうだ」
「これなら、ボンヤリ光さんが、ピリッとして元気になる」
「案外、これ、正解かもしれない」
そんな華奈に春麗が声をかけた。
「ところで、華奈ちゃん、デザートも作ろう」
春麗は、かなりニコニコしている。
華奈は、そんな春麗の笑顔がうれしい。
「わ!春麗って、可愛いなあ、ほんと中国美少女って感じ」
「それに他の巫女と違ってやさしいし、変な文句を言わないし」
華奈も、にっこりと春麗の顔を見る。
春麗もまた、華奈の笑顔にうれしそうな顔でデザートについて話し出す。
「あのね、牛肉餡入り油焼き饅頭」
「牛肉を細かくたたいてに、香辛料を加えて、餅の形に包んでゆっくり油焼きするの、甘くはないよ、成都の名物点心」
ただ、華奈としては、それを聞いてもよくわからない。
「うん!春麗!作り方教えて!」
飛びつくように春麗の横に立ち、一緒に作り始めている。
さて、キッチンは、そんな感じで忙しそう。
光は、入ると「邪魔」と怒られそうなので、ボンヤリとしている。
しかし、ボンヤリも長くは続かなかった。
スマホに、奈良の圭子叔母から、コールが入ったのである。
圭子は、少し不安気な声。
「ねえ、光君、本当に大丈夫なの?」
「渋谷駅の近くで、阿修羅が出て来て、とんでもないことをしたんでしょ?」
「私もなんとなく見えたからさ」
「もうね、心臓がドキドキしちゃってさ」
「その後の回復が心配でしょうがない」
光は、少し困った。
「圭子叔母さん、大丈夫です、華奈ちゃんの鏡の秘法で何とか回復しました」
「そこまで、心配するほどじゃないです」
「すくなくとも、大聖堂とか富士山麓の時ほどの、疲れ方ではないです」
とにかく、大丈夫と言う。
圭子は、それでも不安な声。
「まあ、そういう不安があるから、今度奈良に来てもらうんだけどさ」
「おまけに地震も珍しく、大きいのがあって」
「東大寺戒壇院の四天王さんも、被害だよ」
「多聞天立像が右手に載せている宝塔が落ちたりしてさ」
「幸い、損傷なないみたいだけどさ」
「とにかく敵は、強いよ」
光は、またしても返事に困ったけれど、話題を変えることにした。
「ところで、それもあって、もう少し策を加えようと思います」
「土日で奈良に行きます、巫女全員が行くので、ホテルとかお願いしたいんです、急で申し訳ありません」
それについては、圭子叔母の反応は、即座だった。
「うん、わかった、とびきり結界が強いところを抑える」
しかし、
「それはいいんだけどさ」と意味深な声を出す。
光が「え?」と聞き返すと、圭子叔母が含みのある感じ。
「とにかく、キャサリン、サラ、春麗を家に連れてきて」
「特別に渡すものがある」
光は、首を傾げている。