昔ながらの楓対策 春麗の手際の良さ
光と巫女たち全員の奈良行きが決定して、楓との話は、即座に終了となった。
それは、珍しく楓があっさりと「じゃあ、私も忙しいから」と、テレビ画面を遠隔操作して、切ってしまったからである。
華奈は、その「あっさり」に首を傾げたけれど、光はその理由もわかったらしい。
「あのね、華奈ちゃん、楓ちゃんはお腹が減ったの、そういう時は要件のみになる、言いたいことだけ言って、すぐに食べ物に関心が移る」
華奈は、その説明にすぐに納得した。
「そうだった、自分の言いたい文句だけ言って、お団子があると真っ先に食べるタイプだった」
ルシェールも、その事情を思い出したらしい。
「そう、楓ちゃんね、私が光君とずっと話していると、すぐにムーっと赤い顔になるの、幼稚園の頃ね、なんとなくわかったから、少し文句を言わせて、程よいタイミングを見計らって、ビスケットの箱開けたら、目付きが変わって、食べ始めたら大人しくなった」
春奈は、その昔話で思った。
「そうか、楓ちゃん対策は、きっと胃袋対策なんだ」
「楓ちゃんの胃袋を制することは、楓ちゃんを制することなんだ」
ソフィーは、ククッと笑っている。
「そんなことだから、あんな体型になるの」
「どうみてもメガ体型になるよ、あの子」
さて、そんな話はともかく、春麗が動き出した。
春麗
「さて、楓ちゃんは面白かったけれど、奈良行きも決まって一安心」
「これから、中華の夕食を作るから、みんな手伝ってね」
「今日は光君も、パワーを使ったから、滋養強壮系にする」
そんな話を聞いた光は、相変わらずボンヤリとしているけれど、巫女たちの反応は早い。
すぐに、春麗の周りに集まっている。
春麗は、その巫女たちがうれしいらしい、ニコニコして、説明を始めた。
「えっとね、今日は四川料理にしよう、とにかく身体の中を温める」
「スープは、四川風エビの頭のスープ、エビ味噌と豆板醤を使った濃厚な赤いスープ」
「それから、水煮牛肉、つまり牛肉の唐辛子汁煮、牛肉と青野菜を唐辛子と山椒で煮た、四川の代表的な料理だよ、麻と辣のしびれる味がなかなかホット」
「炒め物は、魚香肉絲、細切り豚肉の豆板醤炒め、甘酸っぱく、ピリッとした辛みになる」
「焼き物も作る、角形骨付き豚バラ肉の直火焼き、北京料理の北京ダック、広東料理の仔豚の丸焼きに匹敵するほどの名菜、豚肉の大切りをあぶり焼く、焼くほどに香ばしくなるよ」
春麗は、なかなか準備も優れている。
巫女たちに、完成写真とレシピを見せながら、説明していく。
春麗は説明を続けた。
「後は、担々麺でも作ろうと思ったけれど、今日は白いご飯にする」
「辛いから、たくさん食べることになるかな」
巫女たちも、完成写真とレシピ、見ながら予想がついたらしい。
フンフンと頷いている。
それでも、春奈が、春麗に質問した。
どうみても、その料理の素材が、足りないと思うのである。
「春麗、ところでさ、材料が・・・全部はないよ」
しかし、春麗は、何も表情は変わらない。
それどころか、フフッと笑う。
そして、その瞬間、玄関のチャイムが鳴り、インタフォンから中国語が聞こえてきた。
春麗は、さらにニッコリ。
「うん、わたしあての宅配便というか、中国大使館の人に良い材料を頼んであったの、だから全く心配はいらないよ」
これには、全ての巫女が、あっけに取られている。