楓と光の変わらない関係、楓が巫女を奈良に招待する
超大文句顔から涙顔になってしまった楓を見て、華奈は思い出したことがあった。
「そういえば、子供のころから、そうだった」
「楓ちゃんは、光さんの、がっかりした顔とか、下を向いた顔に、メチャ弱い」
「幼稚園の頃だったかなあ、三人で真夏に奈良公園で鹿さんと遊んでいて、光さんが疲れたって言って座り込んで」
「それで、私と楓ちゃんがソフトクリーム買って来て、光さんに渡したんだけど、光さん、不器用だったから、クリームをベッチョリ服に落としちゃうし」
「コーンは鹿さんに食べられちゃうし」
「それで、楓ちゃんがメチャ怒って、アホとかせっかく買ってきてあげたのにとか、ずーっと怒ったら」
「光さん、涙目になって、シュンとなって、ずーっと下向いて」
「そしたら、楓ちゃんが今度は困って」
「いいよいいよ、光君なんて言ってベッタリ」
「本当は私がベッタリしたかったけれど、入り込むスキもなくだった」
「そうなると、これも同じ?」
「それにしても、光さんと楓ちゃんは、アイスのトラブルが多いなあ」
「去年の夏だって、光さんのアイスを楓ちゃんが黙って食べちゃって、光さん、がっかりしていたもの」
華奈が、そこまで思い出した時点で、光が口を開いた。
そして、楓に声をかけた。
「わかった、奈良に行きたくなった」
「その時に、一緒に歩こう」
「お参りしたいところもあって」
楓も、今度は素直な顔になっている。
「ありがとう、怒りすぎてごめん」
「お参りしたいところもわかった」
「確かに、あれも効果がある」
光の意図がわかってしまったようだ。
そして、楓はもう少し言いたいことがあるらしい。
真面目な、普通の顔になった。
そして、今度は巫女たちに話しかける。
「巫女様たち、今度の土日でいいので、光君と一緒に奈良に来てください」
「少し作業をしていただきたいこともありますし、とにかく人手が必要なのです」
「もちろん、宿泊施設等は、こちらにお任せください」
ほぼ、突然、「奈良一泊二日の話」を聞いた巫女たちは、顔を見合わせる。
春奈
「まあ、予定はないけれど、全員?」
由香利
「えーっと、大丈夫、行きます、奈良大好きなので」
由紀
「うふ・・・私、行きたい、実は楓ちゃん、大好き、あの光君への文句はスカッとする、今度教わろうと思っている」
華奈は、全く問題ない。
「私は、光さんの行く所なら、どこへでも」
ルシェールは、ニコニコ。
「そうかあ、私も里帰りだ、たまには母ナタリーの顔を見たい」
キャサリンもうれしそうな顔。
「これはラッキー!一泊二日だけでなくて、ずーっと寺社巡りしたい」
サラも異存はない・
「奈良と言えば、平城京、正倉院にも行きたいなあ、古来の楽器を見たい」
春麗の顔が輝いた。
「何でも、中国人を祀った神社があるとか、お饅頭の神様って聞いたことがある、これは参拝しないといけない」
ただ、ソフィーは難しい顔。
「また、この人数で新幹線?それともバスを仕立てる?」
「警備が面倒、大使館にも連絡しなきゃ」
ただ、そこまで言うのだから、行くことには変わりがない。
また、春奈は頭を抱えている。
「奈良に帰ると、また口うるさい鬼母さんが、何だかんだと言ってくる」
「そうは言っても、私だけ残れないし・・・全く、光君と楓ちゃには、かなわない」と、ブツブツ言い続けている。