炸裂!楓の大文句(2)
春奈と華奈が、まず耳をふさいだ。
そして、他の巫女も、それにならった。
その理由は、簡単。
これから、楓の超暴風大文句が始まることは、全員がわかっていた。
ただ、光は、そこで一歩遅れた。
というか、その前から叱られていることを、あまりわかっていない。
心の中で、それでも考える。
「楓ちゃん、なんか、怖いなあ」
「どうして顔を真っ赤にして怒っているのかなあ」
「風邪でも引いたのかな、だったら文句を言わないで、薬飲んで寝ればいいのに」
「それにしても、楓ちゃん、最近、ボリュームアップしたのかなあ」
「きっと、あのボリュームは食べ過ぎに違いない」
楓の口が動いた。
巫女たちの予想に反して、低い声。
「光君・・・今・・・よからぬこと、考えたでしょ・・・」
光は、目を丸くする。
「え?何?楓ちゃん・・・よからぬことって・・・何も考えていないよ」
光は、そう答えるけれど、隣の春奈も華奈も、他の巫女も実は光の心など、しっかり読んでいる。
春奈は思った。
「やはりデリカシーのカケラもない」
華奈は、頭を抱えた。
「どうして禁句なのに・・・楓ちゃんには、絶対禁句なのに」
ルシェールも呆れた。
「確かにアホだ、これについては」
・・・様々、光への「呆れ文句」が充満しているけれど、それも、ほんの少しの間だけだった。
恐れていた事態が出現してしまった。
楓のお怒りの言葉が始まったのである。
「こらー!光君!」
「何だって?私がボリュームアップ?」
「食べ過ぎ?」
「顔真っ赤だから、薬飲んで寝ていろ?」
「もーーー!このアホ!」
「どーーーして、怒られていることがわからないの?」
「だいたいね、光君が、アホでウカツだから、怒られているの!」
「それを何?」
「私がボリュームアップ?大きなお世話だって!」
「食べ過ぎ?うるさい!」
「だいたいね、どうして、食べ過ぎになるか、わかっている?」
「いい?ア・ホで超ボケの光君が心配で、ストレスで食べ過ぎるの!」
「だから、全て光君がいけないの!」
・・・とにかく楓の声が大きい。
口調も、メチャ厳しい、そして、止まらない。
「それに何?私と春奈さんのお母さんに何をさせるっていうの?」
「これから、メチャ暑くなるっていうのに、春日様のお山に入って、蝿の天敵探し?」
「それでさ、汗だくになって、天敵を探している間は、光君は何してるの?」
「どうせ、ボーッとしてボンヤリしているだけでしょ?」
「だいたいさ、光君はナマケモノで、無神経でアホなんだから!」
・・・・そんな大文句が続いていたけれど、途中から堂々巡りになっている。
光は、ずっと黙っていたけれど、ようやく口を開いた。
「じゃあ、やってくれないの?楓ちゃんだけが頼みだったのに」
「僕がなんとかする」
とにかく、残念そうな寂しそうな顔をする。
顔を下に向け、ため息をつく。
すると楓の態度が、突然、変わった。
声も落ち着いている。
「・・・やるわよ・・・それは・・・」
そして条件をつけた。
「光君が、私と従姉妹デートしてくれるんだったら・・・」
今度は、涙顔になっている。