炸裂!楓の大文句(1)
その光の「うろたえ顔」に、更に追い打ちをかける事態が、いきなり発生した。
スイッチを切ったはずのテレビの電源が、なぜか入った。
そして、その画面に、奈良の光の従姉妹、楓が写っている。
その楓の表情を見て、「事情」を知っている華奈と春奈は、さっと光の両脇に座る。
また、ルシェールとソフィーも、ほぼ「厳戒態勢」の顔で、光の周囲を固める。
由香利と由紀は、顔を伏せた。
それほど事情がわからないキャサリン、サラ、春麗は、首を傾げている。
光は、「オロオロ」と声を出す。
「何?楓ちゃん、どうしてテレビに映っているの?」
「誰も・・・ね・・・スイッチいじっていなくて、さっき切ったんだけどさ」
そこまで言って、ブルブルと震えている。
光に尋ねられた楓は、低い声。
「あのさ・・・光君・・・」
「あなた・・・アホ?」
「光君の家のテレビなんて、とっくに遠隔操作できるように、セットしてあるの、気が付かなかった?」
光は、ますますうろたえる。
「そんなの知らないって、いつやったの?」
楓は、またしても低い声。
「去年の夏のコンサートの前に泊まった時だよ、光君が無謀な外出をして、例の暴力団企業とのバトルの時」
「光君のパソコンにもセットした、光君が無謀なことをしたら、すぐに警告できるようにね」
光は、その目を丸くした。
「そんなの全然、知らなかった」
「それってひどくない?勝手にさ」
「それこそ、人権侵害だって」
と、ようやく文句を言い始める。
・・・ただ、その文句が、きっかけとなった。
楓の顔が、真っ赤、完全に変化した。
そして、大暴風が始まった。
「あ・の・ね!この大ボケ光君!」
「どうして、大ボケかましてるの?」
「なんで航空機を手づかみするの?」
「そんなの天神アポロもいるし、天使長ミカエルもいて、金剛力士もいるんだよ!なんでやらせないで、自分がやっちゃうの?」
「いかに阿修羅って言っても、光君の生身の身体から出現するんだから、その後の影響だってあるんだよ!」
「おまけに、予想通り、生身に戻れば瀕死の状態」
「華奈ちゃんが成長しているから、戻ったけどさ!」
「それがなかったら、死んでいるよ!このアホ!」
「キャサリンだって、サラだって、春麗だって戦闘系だよ、医療系じゃない、春奈さんが医療系だけど、最近、若い巫女に気圧されて!なーーんにも治療しないしさあ!」
「それに何?ソフィーまで気圧されて、なんでもっと光君を助けないの?」
楓の文句は、光の他、春奈とソフィーにまで及ぶ。
春奈とソフィーには、少しずつ怒りの表情が浮かんだ。
しかし、楓は、まだまだ文句があるらしい。
恐ろしいことに、胸一杯に空気を吸い込んでいる。