光(阿修羅)の蠅の王対策
突然、春麗が口を開いた。
「蝿の王対策なので、まずは蝿が入り込まないような結界強化とか、入ってきた場合の駆除とか浄化作業が必要となると思うの」
「日本各地の空港での検疫強化とか」
「国全体をあげての衛生管理の徹底とか・・・そこまではいいんだけど」
「難しいのは・・・」
美紀が、春麗の顔を見て頷き、話を続ける。
「確かに日本の検疫とか衛生管理は諸外国に比しても、優れたもの」
「しかし、今回のように、航空機内で仕掛けられた場合が対応は難しい」
今度はサラが話しだす。
「仮に日本だけ、結界とか浄化が成功しても、世界各地では対策が困難」
「何しろ、蝿は汚れた場所の、どこにでも、大量発生する」
美紀が光の顔を見た。
「光君、というよりは、阿修羅様」
「その汚れた場所の浄化も必要だけれど、それ以前に」
光の目が、美紀の言葉で輝いた。
声も、低く変化した。
「ああ、そうだな、ベルゼブブ自身の浄化、叩きのめさないと、いつまでたっても、モグラ叩きでしかない」
「少し対策を真剣に考えないと」
キャサリンが、その光に反応する。
「おびき出す計略とか、あるいはこちらから征伐に?」
光は、少し考えていた。
そして、口を開いた。
「まあ、単純にして、よく知られた対策を一つか二つ打つ」
「そして、おびき出して、一斉に浄化する」
そこまで言って、光は春麗と華奈の顔を見る。
「奈良の楓ちゃんと、そうだなあ、春奈さんのお母さんの美智子さんと協力して欲しい」
華奈は、光の言葉の意味がよくわからない。
「え?何?光さん、楓ちゃん?春奈さんのお母さんって何?」
すると、春麗が、光の言葉の意味を読んだらしい。
華奈に説明を始める。
「あのね、自然界の法則と、薬学を含めた対応かもしれない、楓ちゃんは春日様の巫女で薬作りの巫女でしょ?自然界の知識にも詳しい」
「それから春奈さんのお母さんは、実は防疫関係のスペシャリストでしょ?」
「それで、蝿の天敵を利用するの、細工をしてね」
華奈も、途中からわかったらしい。
「もしかして、あれ?確かに面白い、でも、気持ち悪い」
苦笑いをしている。
そして、他の巫女も、「蝿の天敵」で、理解したようだ。
深刻な顔が一気に変化した。
ルシェール
「そうかあ、さすが光君だなあ、惚れ直した」
由香利
「ふむふむ、賢い、褒めてあげる」
由紀
「まさか、それを思いつくとは、清潔好きな光君がねえ・・・」
キャサリン
「思わず笑ってしまったけれど、これは効果が高いなあ」
サラ
「ほんと、まさかの手だよ、それに、様々応用ができそう」
ソフィーも笑っている。
「これは政府に戻って、早速対策だね、これぞ奇想天外だ」
ただ、春奈だけは、顔が浮かない。
「えーーー?マジ?また鬼の母さんが口を出してくるの?」
「『なんで、その程度のことを、すぐに思いつかないの?』って、絶対皮肉を言われる」
「もーーー!光君でも阿修羅でもいいけどさ、私の立場を少しは考えてよ!」
春奈にキッと見据えられた光は、かなり、うろたえている。