この食堂での働き方を俺に
時計の鳩が6回鳴いた。
俺は今、食堂でのアルバイトに精を出している。
約1000人を有するこの船において、その食堂で料理を提供するのは決して楽なものではない。
働いているのは俺や料理長を含めたったの5人、一人頭200人分の料理を作らなければならない。
「蛙の水煮一つにライス大!」
「モーニングプレートをくれ!」
「おい新入り!モタモタしてるんじゃねえぞ!」
「おにぎりセットのお客様!」
怒号が飛び交う嵐のような調理場、やはりこの忙しさに78zじゃあ割に合わない気がする。
「おい!詰まってるじゃねえか!早く流せ流せ!」
「新入り!遅いぞ!」
やっぱりこの仕事は大変だ。
特にこの世界に来る前で仕事をしてた訳でもないし、労働に関してはとても緩いこの国なので余計にしんどい。
労働基準法なにそれ美味いのか?状態なのだ。
まあ、そんな法律がろくに存在してるとは思えないような国だが。
さて、仕事に集中だ、俺は声を張り上げる。
「次のお客さん!メニューは」
「蛙の... お、てめえ、昨日の」
聞き覚えのある、腹に響く低い声が聞こえた。
その声を聞いた途端に頭が真っ白になり、両手がわなわな震え出した。
冷や汗が首筋を流れるのを感じた。
それはほんの一瞬の出来事だったが、とても長い一瞬に感じた。
顔をあげる。
昨日俺が土下座をしたグループのリーダー格の男だ。
「おい、てめえ、飯が終わったら後で甲板に来やがれ。昨日のなめた態度を反省させてやる」
通訳すると、飯が終わったらお前も終わり、だ。
「ご注文を」
「蛙の水煮二つだ。不味かったらそれなりの覚悟をしろ」
料理を出すと、男は俺を一瞥してから背を向け去っていった。
嵐は過ぎた。
朝の9時を迎えると大概の人はすでに朝食を食べ終えたか、今食べている状態で、食堂は仕事に一段落ついた余裕のある状態だ。
「さて、新入り。次は後片付けについて教えるからな、一度しか言わねえからよく聞いておけよ」
この方は、今日一日おれに食堂での仕事について教えてくれるフォーカスさんだ。
彼の温厚な性格と、精確な仕事、そして他人に対する丁寧な態度は、この食堂はおろか今船上にいる者で最も優れたものではないだろうか。
なんでこんな食堂で働いているのか、もっと良い仕事に就けるのではないか、大いに疑問を持つ。
そんなフォーカスさんに失礼ではあるが、心が若干上の空で仕事に手がつかない。
「さっきお前に話しかけていた、図体のいい男が気になるのか?気にするな、兵士の仲間殺しは御法度だ。どんなごろつきでも、自ら一端の兵士である自分の格に傷つけるような真似はしないだろうな」
昨日寝る前にタールから聞いたが、ここにいる兵士の全員が志願兵だそうだ。
自ら兵士としての並々ならないプライドを持って戦場に行き、戦う。
一端の兵士として戦場に立つことを誇りとして家族と別れた彼らにとって、その自らのプライドを捨てて土下座をするという行為は、一人の兵士としては恥ずべき行為なんだという。
だから昨日の俺の態度に対して侮辱する声が多かったのも、あの男を大いに怒らせたのも、それは当然の話である。
「さて、教えることは以上だ。三日間大変だろうが頑張れよ。それと、確か日給制だったよな、夜にはきちんと料理長に給料を貰いに行けよ。ただでさえ薄給なのに、貰い忘れた分はもう渡してくれないからな。あいつの懐行きなんだぜ」




