この不器用な私と友達に
目を覚ますと、朝日が私のベットを黄色く照らしていた。
雲ひとつない青空と暖かな日差しに、もう少し寝ていたいと思った。
だが、三日後には戦地にたっており、朝日が上るのを喜ぶよりも、その日太陽が沈むのに感謝する日々が来る。
戦いとは、国にとってはどれ程多くの他人を殺せるか、それと同時に、個人にとってはどれだけ長く生きるか。
迎えるのは敵であり、的でない。
敵に近づくほどより殺されるリスクは上がるが、敵に近づかないでは、敵の数を減らすことができない。
そういった矛盾を常に抱えながら如何にそのバランスを崩さないでいられるか、それが戦勝者になるものだと、かつて多くの国を従えたドックツ帝国の名将テリオスルキアは彼の著書で語った。勿論、敵は本気で狩りにいく。
はじめて夢を追いかけ始めたときからその想いは変わらない。ただ、いざ夢の舞台に立つとなると、夢追い人としての私と、恐怖に怯える私とが互いに争い出す。
テリオスルキアは、いかに近づくかのバランスが大切だと述べた。
いや、この心に現れる二つの感情のバランスが何より重要なのではないか。
もし恐怖に怯える自分が勝ってしまった瞬間が訪れたら、その時私には死以外のなにもがなくなる。布団を蹴りあげるとそのまま軍服に着替え、甲板に上がる。
朝の散歩の代わりだ。
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うるさいイビキと酷く臭いにおいに、俺は目を覚ました。
下官の者たちは大人数で一部屋を与えられ、雑魚寝のようにあちらこちらで転げて眠る。
そんな状況は当然快適な眠りを与えてくれず、加齢臭やらイビキやらで落ち着いて寝れない。
隣ではタールがぐっすり眠っているが、いったい何をどうしたらこの空間で快眠できるのか。
俺は毎日これに悩まされなきゃいけないのか。
柱時計は5を指す。
少し気分転換だ、俺は甲板に出ることにした。
甲板では一人の少女が海を眺めていた。
腰まで伸びたカールのかかった金髪、蒼く澄んだ大きな瞳、白地を基調として複雑に青いラインが引かれ、ジャラジャラと金の装飾やボタンがこれでもかと添えられている。
胸元は貧しく、酷く幼げだ。
首には赤のスカーフを巻き、腰にも暗い赤色の洋剣を据えている。よく見れば薄い色の肌とその細い指、細い眉毛が可愛らしい。
こうしてみるとただ一人の幼気な女の子である。
「やあ、おはよう」
どうせ罵ってくるのが分かっているが、挨拶は欠かさない。
これなにか?
俺の潜在的Mっ気の顕れか?
だがその返事は意外だった。
「あぁ、おはよう、ユウマ。昨日は本当に、ごめん」
優等生はその芯までも優等生であるのか、流石に昨日の出来事に心を痛めたらしい。
どんなに鬱陶しい輩でも、自分のために動いてくれたのなら悪態はつけないのだろうか。
「昨日のことは、もういいんだ、自分でもちょっと恥ずかしい。それに、あんたにはお世話になってるんだ、その、本当になにも気にしないでほしい」
少し照れながらぎこちなく答える。
ダメだ、昨日タールに指摘されてから、本当に恥ずかしい。
「昔から、多いんだ。私を目の敵にして嫌がらせを仕掛けてくるやつ」
「安心しろよ、俺達、友達だろ?」
「... ありがとう」
初めてアストラが微笑むのを見た。
なんだ、可愛いじゃん。
それに、友達として認められたのはなんだか嬉しい。
「というか、結局そのジャージを着ているのか」
「あの制服窮屈なんだよ、なんていうか、常に緊張感が側にあるような」
「それが戦争というものだ。数日後には貴様も戦うんだぞ?何を呑気に言っている、馬鹿なのか?」
あ、普通のアストラに戻った。
切り替え早いな。
「馬鹿とはなんだ馬鹿とは!さっきまでのあんたあんなに可愛いげがあったのに」
「ふん、知らん!忘れた」
「おい、ユウマ!お前どこ行ってるんだよ!起きたらいないんだから... お、そちらの子、アストラさんで?」
「悪かったよ、タール。アストラ、こいつ、タール」
「ど、どうも、私の名前はアストラ、段位は大佐、よろしく」
「なんだそれ、固いの。俺はタールだ、よろしくな」
「貴様はむしろ馴れ馴れしいな」
こうして俺たち三人は出会った。
この出会いから、運命の歯車が回り出したことは、まだ誰も知らない。




