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銃口の先を自分に  作者: モスチキン
2/11

この異世界の証明を私に

私は走り出した軍艦の、甲板の上で、風を浴びていた。

潮風が気持ちいい。

海は昔から嫌なことを忘れさせてくれる。

小・中学校時代も、高校時代も、良くお世話になったものだ。

海の上をゆっくりと渡る白い雲は、心を落ち着かせてくれる。

ゆらゆらと気持ちよさげに海を泳ぐ魚の影は、私の心もスッキリさせる。

時を刻む波の音は、窮屈な時間を忘れさせてくれる。

さっきの男は、アレはなんだ、失礼な。

せっかく話しかけてあげたのに嫌みなことしか言わないし、言ってることも良くわからないバカだし、寝巻きで戦地に向かうし。

まあ、もう二度と会うこともないだろう、あの手の男はどうせすぐに死ぬ。

バカだし。

私が艦内に私に与えられた部屋に戻ろうと思ったとき、隣に人の気配を感じた。

あの男だ。

どうやらもう軍服に着替えたらしい。

なんだよ、もう再会したよ。


「さっきは悪かったな。それより、聞かせてくれよ、何でこの国は戦争をしてるんだ?」


「どうして貴様はそんなに馴れ馴れしいんだ?それに、馬鹿はほどほどにしてくれないか?何で戦争をしてるかなんて、子供の時からさんざん聞かされてるだろう」


「バカで悪かったな。なぜ戦争なんかしてるのか知らないのも、あんたを知らないのも、服装も、いろいろ事情があるんだ」


「その事情、聞いてほしいのか?」


「聞いても信じてくれないだろう」


「私が大佐って信じてないぐらいにな」


「いや、信じてるよ!しつこいなあ」


「じゃあ、言ってごらんよ」


「俺、多分、異世界から来たんだ。朝起きたらなぜかさっきの海辺で寝てたんだ。もともと日本って国の生まれなんだが、俺のいた世界ではフィールランドもノルウェイも聞いたことがない」


異世界?日本?この男は本当に良くわからない。

まず私はこの手の馬鹿話は好きではない。

異世界なんてものが存在するはずないし、存在するなら証拠を見せてほしい。


「ほら、あんた、信じてないんだろう。俺だって良くわかってないのに」


「信じるもなにも証拠がない。貴様だって、今日初めて会った頭のおかしい奴に、突然異世界から来ただなんて言われても信じないだろ」


「頭のおかしいやつだなんて失礼な。俺だって少しは頭のよさに自信があるんだから」


「だったらその頭の良さとやらで、異世界から来た証拠を出しな。そしたら信じてあげてもいいぞ」


「そんな無茶な...。だいたい、寝間着のまま転生してきて、なにか持ってるわけでもないし...。」


男はうんうん言いながら考え出した。

うむ、確かに難しいかもしれない。

仮に、異世界が存在するとして、今のまま連れていかれてもきっと証明できない。

いや、きっと異世界から来ただなんて言い出さないだろう。

信じてもらえないとわかって言いながらどうしてこの男は私なんかに、今日会ったばかりの無愛想な女にこんな話をしたのか、仮に信じてもらえたとして、何をしてほしいのか、ますますあの男がわからない。


「ほんのちょっとだけ、ここで待っててくれないか?証明まではいかなくても、信じてもらえるかもしれない」


そういうと男は、艦内に駆け出した。なんで、こんなに必死なんだろう。


俺は、艦内の荷物置き場に戻ると、俺が唯一あの世界から持ってきたもの、パジャマ代わりに愛用しているジャージを引きずり出した。

黒の生地に赤いラインの入った、いたって普通のジャージ。

なんなら、近くのスポーツ用品店で腐るほど見つかる。

ただ、このジャージには、この世界にないてあろう技術が埋め込まれているのだ。

それは、ファスナーである。

俺が生まれた世界、読者のいきる世界において、ファスナーは、確か19世紀の後半か、20世紀に作られた技術だ。今は1429年で、見た感じこの国はそこまで技術が発展しているようには思わない。

というのも、たった数10分前、俺が着た軍服のズボンには金属のボタンが使われていたに過ぎず、ファスナーを見ていない。

だから、ちょっとスースーする。

もちろん、一般兵の軍服にコストをかけるのを惜しんでファスナーを省いている可能性も否定できないが、彼女が大佐であるなら彼女の軍服にファスナーをつけない理由がない。

アストラが見れば、このファスナーが異世界から、あるいは国外から来た証拠になるはずだ!

俺は、急いでアストラのもとへ向かった。


「いや、ジッパーぐらい知っているぞ。君はどこまでバカなんだ?」


「え、でも、そんな技術あるようには、」


「残念だな、そんなものが異世界の証拠になるなら、まず初めて会ったときに貴様のジャージについてるのが何か聞くと思わないか?」


そうか、1429年といえども、キリストの誕生からとは一言もいってない。

どうやら俺が思っていた以上にこの国の技術は発展していたらしい。

単純に戦争のせいでお金がないだけかもしれない。

そういえば、戦争が技術発展の礎と聞いたことがある。

戦争があるから飛行機が発達して、より効率のいいエネルギーが開発されて、ピストルや戦車に新たな技術が用いられてきたそうな。


「だけど、何だ、きみが異世界から来たんじゃないなんて思う証拠もないな。いいだろう、信じやしないけど、疑いもしないさ。」


「なんだそれ、全然腑に落ちないし、なんの解決にもならないじゃないか」


「まあ、いいじゃないか、それほど必死に証明しようとしてるんだ。夢のある話の一つや二つ、例え信じたとしても損にはならないだろ?」


「そういうものかね」


「そういうものなのだよ」


「ところで、えっと、ユウヤだっけ?貴様はどうして異世界を私に信じてさせたいんだ?信じたところでなにも教えてやれることはないぞ」


「協力してほしいんだ。異世界に来たんなら、異世界からかえる方法が絶対あると思うんだ。それを探すのに協力してほしい。俺がこの国で初めて作った友達として」


「友達... ?いつ貴様と友達になった!貴様のような、バカで、馴れ馴れしい、貴様なんかと!第一、天才に友達など要らないのだ」


また怒らせちゃったようだ、アストラは海を一瞥すると、身を翻して艦内へと帰っていった。

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