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銃口の先を自分に  作者: モスチキン
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このバカの治療を早急に

雲一つないきれいな青空。

ああ、今日ってこんなにきれいな空をしてたんだ。

朝の七時から約三時間、俺は確かずっとこの空の下で立っていたはずだ。

なのに、この空の美しさには気づかなかった。

それは、常に他人を見下して生きてきた俺が、決して上にある存在を見ようとはしなかったからだ。

もし上に誰かがいるのなら、そいつを引きずり下ろして無理にでも自分を上に立たせていたんだ。

常に下だけ見て、まるで自分が一番偉い存在であるかのように勘違いしていた。

違うんだ、俺たちは上を向いて歩いていかなければいけなかったんだ。

空の美しさを教えてくれたのは、隣で一緒に寝ているやつだ。

あの男の名前はユウマ。

きっと、この男に焼かれなかったら俺は一生上を見て歩くことはなかっただろう。


「おい、お前」


「なんだ」


「悪かったな、昨日のこと」


「ああ、そんなこと、全然いいんだ」


窓からそよ風が優しく吹く。

暫しの沈黙が流れる。


「一つ聞いて良いか?」


「なんだ?」


「作戦は成功か?」


ユウマは少し考えた素振りを見せると、たった一言呟いた。


「大失敗」


-------------------------------------------------------------------------


「おい、貴様、本当に馬鹿なのか?」


我らがロリっ娘大佐ちゃんが、一応にもお見舞いに来てくれたみたいだ。

ただ、さっきまでの涙は既に消え、半分バカにしたような目で俺をみている。


「もう一度聞くが、貴様、本当に馬鹿なのか?なんなんだアレ、あの録でもない試合運び。」


ええ、ほんっと、なにも言えません。

バードケージを倒してやると勢いづけて意気揚々と向かったものの、まさか自滅で終わるとは思ってもみなかった。

作戦も、考えに考えたものだったはずだ。

ただ、少し、考えが浅かったかもしれない。


「まず、第一手から貴様の馬鹿さ加減が丸出しだったな。なにアレ、相手に卑怯な手を使わないようにさせて、自分は準備万端に卑怯な手を、惜しみ無く使う。挙げ句の果てにはその自分の道具で大怪我。貴様、何がしたかったんだ?あれはバードケージが主人公サイドだったのか?お前どう見ても悪役だったぞ。むしろ悪役のエキスパートだ」


「ロリ大佐ちゃんよ、さすがにそこまで言わなくていいんじゃないかな?いくら俺でもへこむよ?あれでも、俺わりと頑張った方だとおもうよ?褒めてつかわしてもいいんだよ?」


「なんだそのロリ大佐とは!貴様、上官をバカにしてるのか!」


「馬鹿にしてるんじゃないよ」


俺は一つ深呼吸をした。


「愛でてるんだよ」


俺は満面の笑みで彼女を見つめた。


「貴様のことを友達だなんて一瞬でも思った私が馬鹿だった。なんだ、どこに、ロリっ娘要素がある?こう見えても15歳だぞ?」


「15歳って、そんなに発育悪いの?」


この一言はきっと余計だったのだろう。怪我人相手に容赦しない彼女は、俺の右脇腹を50%の力で殴ってきた。


「うがああああああああぁぁぁあああ!!!」


「うるせぇぞ!」


「あああぁぁぁ...ごめんなさいぃ...」


「ごめんなさ、あ、貴様、」


「お、あ、アストラ大佐か。その、なんだ...」


バードケージはうつむくと、ゴニョゴニョなにかいっている。


「なんだ、早くいえ」


「その...すまんかった。昨日も、今日も」


アストラは何を考えているか、じっとバードケージを見て、それからすぐに口を開いた。


「上官である大佐ちゃんは、下官の者共に優しいのだ。いいだろう、二度としないと誓うならいくらでも許そう」


この言葉、どう見てもナルシストな発言且つナチュラルに他人をバカにしているのに、当の男は嬉しいのか、単なる真性のマゾヒストなのか、涙を流している。


「アストラは、どこも怪我はないのか?俺が戦う前に何かあったみたいだが」


「そうだ、その怪我、俺の手下が本当に申し訳ないことをした」


バードケージは包帯でほとんど動けない身体にも関わらず、土下座の要領で首を動かした。


「いや、貴様等のそれに比べたら大したことはない。人の心配よりまずはその身体を心配しろ。あの男にされたことなぞ、せいぜい無理矢理口に入れられたぐらいだ。」


「口に入れられた!?何をだ!?このいたいけな少女の口に何を入れたんだ!?」


「あとは、液体を全身にぶちまけられたり、太くて硬い一撃をお見舞いされたり」


「ああ、あ、あ、あいつがお前にそ、そ、そんなことをしたのか!?申し訳ないっ!!」


俺とバードケージの慌てぶりを見て、ニコニコ笑っている。

いつもムッとした顔でいたので感情表現が苦手なのかと思っていたが、案外そうでは無かったみたいだ。

やはり笑っているときの彼女は愛嬌に溢れている。


「なんだなんだ!?大佐さん、何されたって!?」


「おお、タール、来てくれたのか。ていうか慌ただしいにも程があるぞ」


茶髪の目立つ男が、病室に飛び込んできた。


「貴様らの反応は面白いな。紅茶をぶちまけられ、硬くて太い腕でこの頬を殴られたぐらいだ。多少は痛いがこの程度なんと言うこともない」


「そ、そうなのか。それなら、まあ、良かった」

殴られているのに良かったとはいかに。

さっきの動揺のしようから、どうせもっと酷く、もっといけないことを想像していたに違いない。

この変態野郎が!

え?俺?そんな気持ち悪い妄想はしてないぞ?


「ところで、ユウマ、お前この船に俺たち以外の知り合いはいるか?例えば、薄紫色の髪の女の子とか、琥珀色の目の女の子とか、ポンバドールをした女の子とか」


「なんだそれ、あんたの願望かい?急に女の趣味暴露されても困るんだが」


「いやいやそんなのと違うんだ。そんな女を知らないって言うのならそれでいいんだ。ただ何かちょっと厄介なことになっているみたいでな」


なんだ、また厄介事か。

昨日の事件といい、今朝からといい、何かと事が起きるな。

これ、主人公補正とか言うものなのだろうか。


「髪が紫で琥珀色の目?私そいつ知っているぞ」


「本当か?大佐さん。だいたい大佐さんより少し背が高くて、む、胸も、お、大きい女の子だ」


「なんだ、タール、貴様も私を未熟扱いするのか?いい加減にしないと刺すぞ。まあともかく、その女なら私の知り合いだ。友だちまではいかないが、よきライバルのようなものだ」


「そうだったのか、なら話が早い。その女をちょっと説得してきてくれないか。全然聞く耳を持たないんだ」


「お、おい、タール。その紫の髪の女は、一体何をしてるっていうんだ?俺と知り合いだったらなんだったんだ」


「ユウマ、どうしてかお前のことを恨んで、悪評を垂れ流してるんだ。俺も実際に、お前が窃盗してるだなんだと聞いたんだが」

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