この俺の作戦を勝利に
「おいお前ら!あのマントの兄ちゃんが、バードケージを倒すってよ!」
「マジかよ!?あんなヒョロガリのくせに!?」
「何でもあの男、昨日奴に土下座させられて、その復讐に行くらしいぜ!」
「あんな奴に勝てるのか?士官学校の教師を病院送りにしたって聞いてるぜ?」
「バードケージって誰だ?」
「おま、やつを知らねえのか!?相当横暴なやつで、他人のプライドをズタズタにしてそれを楽しむような外道だ!」
「お前ら!バードケージが負けるところ、見に行こうぜ!」
フハハハハッ!俺は、『マントの男』だ。
やれやれ、なんなんだあの騒ぎようは。
俺が一昨日までいた世界にはインターネットというものがあったが、確か2ちゃんねらーの者共が、何かあるたびにあんな風に騒いでたっけ。
世界は違えど、やることはどこのやつも同じだ。
さて、俺は死を覚悟で、どうすれば少しでも奴にダメージを与えられるかだけを考えて、必死になって作戦を考えていた。
が、どうやらただの杞憂だったようだ。
俺は、やつを倒す算段をつけた。
これから、バードケージの息の根を止めに行く。
俺は甲板に上がる梯子に足をかけた。
行ってくるぜ!
甲板は既にオーディエンスで埋め尽くされていた。
真ん中には、広く空間がとられている。
そこにいたのはバードケージ、俺の獲物だ。
甲板に立つと、俺は大きく息を吸う。グッと拳を握る。
「バードケージ!俺だ!」
「ほう、怖じ気づかずにきたか。どうだ?これから苦しい目に遭うって感情は。こればかりは試験で聞かれても答えられないぜ」
「だったら、その答え、教えてやるよ」
「妙に余裕綽々だな。食堂でのビビりようはどこにいったのか。ところで、このオーディエンスの量は貴様が謀ったのか?」
「だったらなんだ?」
「こんな回りくどいことをしなくても、お前は死ぬんだからな。どうせ、プライドの高い俺が、大勢の客を前にして卑怯な手を使えないようにするといったとこだろう。だが、それは貴様も同じこと。ただのフィジカル勝負だ。これだけの体格差があれば、お前ごとき禁じ手を使わなくても楽勝だ」
俺は、足を踏み出し、おもむろに舞台の真ん中へと歩き出した。
「六対一が一対一になったんだ、これだけで十分違うぜ」
「ハハハハハッ‼考えたようだな。おい、お前、女を解放しろ。二人がかりで襲ってきたらなんて考えていた俺が間違っていたみたいだ。」
そういうと、バードケージの配下の一人が奥から誰かをを連れてきた。
「ユ、ユウマァ... こいつらを、やっつけて... 」
アストラだ。
その目からは涙が流れ、顔は真っ赤に腫れている。
手足は震え、今にも倒れてしまいそうだ。
奴ら、昨日の今日でまたアストラにひどい目を、なんなんだ、奴らは。
昨日襲われたときでさえ、彼女は涙を流さなかった。
それどころか、顔色一つ変えなかった。
ここまで彼女を傷つけて、いったい何がしたい。
「てめぇら!アストラに何しやがった!」
「ただの人質だ。暴れるから、抑えるのに必死だったんだぜ」
その言葉を聞くか聞かないか、俺は奴の顔面に飛びかかっていた。
オーディエンスの喚声が聞こえる。
俺は腰に据えた袋を引きちぎると、奴の顔面に投げつけた。
「くそっ、なんだ!粉が... 」
小麦粉の煙幕だ。
奴の視界を奪う。
食堂からくすねてきたのは正解だ。
「おいユウマ!卑怯もの!」
「道具を使うなんて、姑息な!」
「それでも一端の兵か!」
オーディエンスからの大ブーイングは誉め言葉だろう。
「くそうっ、てめえ、卑怯だぞ!」
「俺にはプライドの欠片も無いんでな。」
そう吐き捨てると、俺は奴の足元を狙ってわっか状に結んだロープを投げた。
目線をあげると、小麦粉パニックから立ち直ったのか、バードケージは攻撃体制に入っていた。
ポケットからサックをとり出し、装着すると鋭角から俺の左脇腹にブローをかました。
「うがああああああああぁぁぁあああ!!!」
痛い、以上に熱い、神経が直接、面の粗いタオルでゴシゴシ拭かれたような、激しい痛みが襲う。
「お返しだ。おっと、卑怯だなんて言わないでくれよ」
ちょうど昨日蹴られに蹴られたポイント、まだ完治していない。
「なんだ、お前もか!バードケージ!」
「正々堂々と戦え!」
オーディエンスは常に平等だ。
痛みに耐えきれずうずくまっていると、バードケージは第二撃を食らわせようと向かってきている。
さあ、ここだ。
俺はマントの裏に隠していた水飴をとり出し、頭から被った。
「近づかない方が身のためだぜ。滑りに滑って、戦いどころじゃなくなるぜ?」
「チッ・・・」
「っしゃあ!俺の反撃だ!」
次の攻撃の準備をする。
マントの裏、右から三つ目の袋。
右手を後ろに回し、袋の感触を確かめる。
これさえ決まれば俺の勝利はほぼ確定だ。
俺は全身が震えるのを感じた。
それは恐怖による震えとは違う、明らかな勝利を確信した震えだ。
俺は一歩、奴に近づいた。
すると、さっき頭から被った水飴の一部が床に撒かれていたのか、俺の足がそれに絡まる。
この状況、誰が予想したか、その勢いのまま思いきり後方に倒れ、背中を強く打ち付けた。
その衝撃で背中の隠しアイテムの袋がすべてと、後ろにやっていた俺の右手が潰された。
「ああああああああああああああああああああああ!!!!」
勝利確信のアイテム、ライターとサラダオイルが背中で反応し、炎をあげる。
その炎は一瞬にして水飴を伝って俺を焼かあああああああ、あ、あづいっ!あづいっ!
マントも一緒に燃えるうううああああ!
余計熱い!
観客は動揺している。
もちろん、俺と対峙する男も。
ダメだあああ!!もうダメ!!!助けてくれえええええ!!!
だがこのとき、先ほどの投げたロープを伝って、炎がバードケージの足下まで届いていたのには誰も気がつかなかった。
そして。
「うおおおおおおあああああああ!!!」
「バードケージ兄貴いいいいいい!!!」
俺もやつも大きな炎の燃料となった。




